「The Black Echo」のレビューの中で、主人公のハリー・ボッシュがベトナム戦争の記憶に悩まされていることについて、
アメリカ人はいまだにベトナム戦争の影を引きずっているようです。
アメリカ人の書いたものには、この作品に限らず様々な作品にベトナム戦争への複雑な思いが描かれています。
その思いを日本人が本当に実感できるかといえば、なかなか難しいのですが。
と書きました。
そこで今回は、
そもそもなぜベトナム戦争が始まったのか
なぜ暗い影をいまだにアメリカ人の心に落としているのか
について、ベトナム撤退を敢行したニクソン政権の国務長官であったキッシンジャー( Henry Kissinger )の「Diplomacy」を読みながら考えてみたいと思います。
ベトナムはフランスの植民地であった。
第二次大戦時、日本軍がフランスを追い出したが、敗戦と同時に日本軍は撤退する。
支配者がいなくなったベトナムでは、ホーチ・ミンが独立を目指して共産主義国家、ベトナム民主共和国を建設する。
しかしフランスは再占領に乗り出し、ベトナム独立戦争(第一次インドシナ戦争)が始まる。
だがフランスにはもう戦争を続ける力は残っておらず撤退。
以降は正式にアメリカが軍事介入し、アメリカ率いる南ベトナムとホーチ・ミン率いる北ベトナムとの間でいわゆるベトナム戦争が始まる。
二十年にわたる戦いの後、アメリカは完全撤退する。
アメリカ撤退後、北ベトナムが南を吸収し、ベトナム社会主義共和国が建設された。
アメリカはベトナム戦争に敗北した。
勝てなかった戦争はアメリカにとっては初めての経験であった。
多い時には五十万以上の兵力を投入し、週に千人の死傷者が出たこともある。
それでも勝てず、十年にわたって守ってきた南ベトナムを放棄した。
アメリカ撤退後、北ベトナムは南ベトナムを飲み込む。
南の住民の多くは虐殺され、強制収容所送りとなった。
戦争末期、アメリカ国内では社会が分裂するほどの反戦運動が吹き荒れていた。
戦争経験は誰にでも傷跡を残すであろう。まして勝てなかった戦争ではさらに傷は深くなる。
自分が現地で戦っている間、母国では反戦運動が起きていた。自国民に非難されながらの戦いは兵士にとって複雑な思いであっただろう。
そして、自分たちが死守してきた南ベトナムがアメリカの撤退後、北に蹂躙されるのを報道で知る思いは、いかばかりであろうか。
キッシンジャーの考えでは、アメリカが国際関係を論じ、戦争をするにも独自の理想論が根底にある、というものである。
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