2011年3月15日 Posted by まさんた
伊藤和夫『英文解釈教室』を読む(3)~番外編の番外(前編)
またまたこの英文について。
Those who live nobly, even if in their day they live obscurely, need not fear that they have lived in vain.
― 伊藤和夫『英文解釈教室」 7ページ
"伊藤和夫『英文解釈教室』を読む" では個々の例文についてはサラッとすまそうと思っていたのですが・・・。
なんだかんだで、細かい英文法・英文解釈のことになってしまいました。
結局、いつもこうなるのですけどね。
そんなわけで、番外編の番外の番外。
空しく終わる?終わらない?
伊藤訳、
Those who live nobly, even if in their day they live obscurely, need not fear that they have lived in vain.
高潔な生活を送っている人は、たとえ無名のまま人生を送っても、人生が空しく終わることを恐れる必要はない。
they have lived in vain の訳が「人生が空しく終わること」なのはおかしいのではないか、誤訳なのではないかと、前回書きました。
もう一度訳文を。
高潔な生活を送っている人は、たとえ無名のまま人生を送っても、人生が空しく終わることを恐れる必要はない。
これを英語の訳文はなく、日本語として読んでみます。
うがった読み方をすれば、
高潔な生活を送っている人は、たとえ無名のまま人生を送っても、人生が空しく終わる(ことになることもあるが)それを恐れる必要はない。
とも読めなくもない。
原文、
Those who live nobly, even if in their day they live obscurely, need not fear that they have lived in vain.
のイイタイコトは、
高潔な人生を送っている人は、世に名をとどろかせることなく人生を終えたとしても、(その)人生が空しく終わることはないから、そんなことを恐れる必要はない。
だと思うんです。
つまり、こういうこと。
【伊藤訳】
高潔な生活を送っている人は、たとえ無名のまま人生を送っても、人生が空しく終わることを恐れる必要はない。【拙解釈(※ 訳ではありません)】
高潔な生活を送っている人は、たとえ無名のまま人生を送っても、人生が空しく終わることにはならないので、恐れる必要はない。
この例文はラッセル(Bertrand Russell)の文章。
『英文解釈教室』ではこの一文だけですが、Google で調べると次の文章が続きます。
Something radiates from their lives, some light that shows the way to their friends, their neighbours, perhaps to long future ages.
¶ show the way to ~ 「~に手本を示す、~に道筋を示す」
難しい英文ではありませんけど、一応、簡単に英文解釈。
Something radiates from their lives,
一度、Something という意味不明な?単語を主語にし、ではその Something とは何ぞや?と疑問を持たせる。
そして some light、と続ける。いわゆる同格。
『英文解釈教室』の100ページの次の英文と基本的には同じ構造。
He had something that I didn't have ― an idea.
文章に味を付けるための修辞(レトリック)ですね。
Something ・・・some 、これもレトリックの一種かと。頭韻というか。
さて、radiate。
『ロングマン』の定義。
If things radiate from a central point, they spread out in different directions from that point.
noble な生活を送っている人たちは、周りに Someting (= some light)を放っている。
当たり前ですが、light という単語は「比ゆ」で、「周りの人たちが感化される人格、生き方」ぐらいの意味でしょう。
some について
余談ですが、some について。
some を『コウビルド』で調べてみる。
定義その1。
You use some to refer to a quantity of something or to a number of people or things, when you are not stating the quantity or number precisely.
この定義に使われている a number の number は単なる「数」であり、それに不定冠詞が付き、「とある数」。
a number (とある数) → なんの? → of people or things (人や物の)。
つまり、ある意味、形容詞化している a number of ~ (= many or some)とは構造が違います。
あくまで、主役は number (数)。
※ 参照 - 拙記事 a number of は「多数の、多くの」ではない!?
定義その2。
You use some emphasize that a quantity or number is fairly large. For example, if an activity takes some time, it takes quite a lot of time.
定義その3。
You use some to emphasize that a quantity or number is fairly small. For example if something happens to some extent, it happens a little.
飛ばして、定義その5。
If you refer to some person or thing, you are referring to that person or thing but in a vague way, without stating precisely which person or thing you mean.
some person、もしくは thing に言及したとき、その person や thing に関して語っているのではあるが、はっきりと、どの person、どの thing と名指しせず、あくまで曖昧に言及している。
さて。
some light の some の何番目の定義でしょう?
定義2、fairly large なら、strong light。
定義3、fairly small なら、weak light。
もう一度、英文を。
some light that shows the way to their friends, their neighbours, perhaps to long future ages.
noble が生活を送っている人たちが放つ some light に影響を受けるのは、friends や neighours。
身近な人々です。
ひょっとしたら、遠い未来の人たちにも、と付けたしてありますが、あくまで、ひょっとしたら。
となると、定義2、fairly large ではないかも。
定義3、fairly small は微妙。
ほ~んの少しの light では、身近な人たち、感化される?
残りの定義の1か5はどうか?
【定義1】
You use some to refer to a quantity of something or to a number of people or things, when you are not stating the quantity or number precisely.【定義5】
If you refer to some person or thing, you are referring to that person or thing but in a vague way, without stating precisely which person or thing you mean.
定義5は、ある pearson、ある light を in a vague way に指すことですから、あの英文にはなじまない。
となると、定義1が無難かなぁ~と。
そして、重要なのは定義の後半。
you are not stating the quantity or number precisely
strong light、weak light とは言わず、あくまで "ぼかす"。
ただし、この some はどの定義?については、次回まで保留にしておきます。
なぜ some にこだわったかというと。
定義の2と3の定義を見ると、fairly large と fairly small となっており、真逆です。
He remained silent for some time.
これをどう訳すべきか?
この英文は fairly large のほうに載っている例文です。
となると、「長い時間、しばらくの間」と訳すのが正しい。
英和辞典でも同じです。
He walked some miles.
It takes some years to be a trained teacher.
これはジーニアス英和辞典の例文ですが、それぞれ訳文はどうなっているか?
「何マイルか」「何年か」ではありません。
彼は何マイルもあるいた。
ベテランの教師になるにはかなりの年数がかかる。
some について長々と辞書から引用したのは、いろんな参考書を見ていると、for some years を 「何年か」や「数年間」と杓子定規に訳している参考書が多いような気がするから。
もちろん、文脈によってはその訳でも O.K. でしょうけど。
some のような一見すると簡単に思える英単語は逆に難しい。
そのうち、some のことを書こうかと思っています。
というわけで、この話、終わり。
さて。
some light that shows the way to their friends, their neighbours, perhaps to long future ages.
この文の構造。
shows the way
to their friends, their neighbours,
perhaps to long future ages.
friends と neighbours はひとつの前置詞 to に支配されているのに対し、long future ages は to に単独に支配されています。
つまり、
shows the way to A, to B.
という構造。
noble 生活を送っている人にAが感化されるのは当たり前なこと。
perhaps 以下は別。
身近な人々だけではなく、perhap、遠い後世の人々にさえ影響を与える(かもしれない)のだ、と。
※ perhaps については、拙記事 - probably などの「確信度」を表す副詞を参照されたし。
生前は(程度の差はあれ)無名でも、死後に有名になる例はたくさんあります。
言語学ならソシュールとか。
さて。
ここまでのまとめ。
【主張・イイタイコト(の前振り)】
Those who live nobly, even if in their day they live obscurely, need not fear that they have lived in vain.【その理由・根拠】
Something radiates from their lives, some light that shows the way to their friends, their neighbours, perhaps to long future ages.
このあとに、作者の(本当の)【主張・イイタイコト】が続きます。
I find many men nowadays oppressed with a sense of impotence, with the feeling that in the vastness of modern societies there is nothing of importance that the individual can do. This is a mistake. The individual, if he is filled with love of mankind, with a breadth of vision, with courage and with endurance, can do a great deal.
これは冷戦が始まった時にラッセルが発表したもの。
ラッセルはモームにも「思想のブレ」を批判されたほどの変節漢(?)。
反戦・戦争擁護・反戦、とコロコロと主張が変わります。
最後は、
Red than dead.
(米ソ対決による)死より赤(共産化)がまし。
との思想に収まったようですが。
それはともかく。
この英文に関しては、ある程度、説明が必要だと思います。
それと。
noble を「高潔な」とせず、英語のまま書いてきたのは、noble な生活を送っている人々と、引用文の中に出る次のような人の生き方に何らかのつながりがあると思ったから。
The individual, if he is filled with love of mankind, with a breadth of vision, with courage and with endurance, can do a great deal.
なんとなく、nobly 、「高い志を持って」などの訳が思い浮かぶ。
次回、「番外編の番外(中編)」ではこの英文について駄文を。
そして、「番外編の番外(後編)」では問題の、
【英文解釈教室】
Those who live nobly, even if in their day they live obscurely, need not fear that they have lived in vain.【原典】
Those who live nobly, even if in their day they live obscurely, need not fear that they will have lived in vain.
消えた will。
「will あり、なし」の違い、この will は未来完了か、現在完了の推測なのか、そして noble (nobly)、in their day の意味について考えてみたいと思います。
番外編の番外、これだけ続くとなると、もう番外じゃない気がしなくもないですが。


コメント
from 新谷仙蔵
詳細な検討ご苦労様です。
とりあえず、今回の記事で気になった点を。
someのコウビルドの定義1に関してですが、ここでのa number of people or thingの部分は、その前のquantityと対比する形でnumberが使われていることから見て、「人や物の数」という意味であって、a number ofが一定の数量を表す場合にはあたらないと思います。
したがって『a number of の意味は、基本、「多い」ではありません。』という記述は、今回の場合はあまり関係はないかと。
要するに、この定義は、物の量や、人や物の数を表すが、詳細に量や数を述べるのではない場合にsomeが使われるということを言っているにすぎないと思いますが、いかがでしょう?
2011年3月23日 05:23
from まさんた
新谷仙蔵さん、こんにちは。
a number of は「多くの、多数の」という意味だと思っている方もいると思って注意書きしたのですが、紛らわしい表現でしたね。
“この定義に使われている a number of は「多くの」ではなく、明確には数を表さない、「とある数の」という漠然とした意味です”
と書き直しました。
『ロングマン』でも some の定義に a number of を使っていますね。
日本では a number of は「多くの」が鉄板定義。
some の定義に a number of が出ると少し混乱するのではないかと。
some について書いたのは、とある(some)参考書で、意味からして、どう考えても「長年」の意味なのに、訳が「数年」になっていたから。
それを書くと、また誤訳指摘か・・・となり、「とある(some)ブログで・・・」と書かれるのは懲り懲りなので、控えましたけど。
昨日、「番外編の番外(中編)」を書き終えましたが、長くなり過ぎて、削る作業中。
(正否はともかく)一語一語にこだわるのは面白い、というか、性に合っていると実感しました。
2011年3月23日 21:03
from 新谷仙蔵
someもなかなか難しいですが、実はmanyも難しい。
manyというのは、少なくはないが、50%を超えることはないのだという記事をどこかで読んだことがあります。
その記事の通りだとすると、manyを「多くの」と訳せる文脈というのは、実はかなり少ないということになりそうです。
それはさておき、前回の投稿の文章が少しわかりにくかったかも知れません(申し訳ありません)ので、少し表現を変えてみます。
a number of people or thingの部分について、まさんたさんはpeopleとthingという名詞をa number ofという数量を表す形容詞句が前から修飾する形で解釈されているように思えます。
しかし、この部分はnumberという名詞をof people or thingという形容詞句が後ろから修飾している形だと読むべきなのではないかというのが、私の言いたいことなのです。
要するに修飾語と被修飾語が逆ではないかというのが私の言わんとしているところですが、いかがですか?
2011年3月24日 02:28
from まさんた
新谷仙蔵さん、こんにちは。
まことに的確な指摘、ありがとうございます。
people や thjngs の a (とある) number (数)、であることはわかっていましたが、またまた言葉足らずでした。
“a number の number は単なる「数」であり、それに不定冠詞が付き、「とある数」。
つまり、a number (とある数) → なんの? → of people or things (人や物の)です。
ある意味、形容詞化している a number of ~ (= many or some)とは構造が違います。
あくまで、主役は number (数)。”
と、またまた訂正しました(それでも不十分かもしれませんが)。
a number には of が付き物で、どうしても of を書きたくなってしまいまして。
「a number of = 多くの」ではないこともありますよ!、ということばかり頭にあり(それについて記事を書いたので)、英文の構造の根本を書き忘れました。
新谷さんからの2度目のコメントでようやく気付きました。
最初に頂いたコメントで「quantityと対比する形で」と書かれているのに。
以前は英英辞典の定義を引用する際、自分なりに和訳していまいたが、最近は面倒(?)なので書かなかったことが原因かも。
2度も指摘のコメント、ありがとうございました。
今後とも、ご指摘よろしくお願い致します。
2011年3月24日 21:08
from 匿名
fear thatのthatは、that以下が確かなことを表します。だから、空しく終わるかどうかではなく、空しく終わることを恐れるが正解です。
2011年3月26日 22:47
from まさんた
>fear thatのthatは、that以下が確かなことを表します。
僕個人の意見ですが、fear には大きくわけて、2つの意味があると思います。
1つは、「that 以下が確かなこと」。
『ロングマン』の例文。
I fear that there is little more we can do.
これは that 以下はほぼ確実な用法。
もう一つは、「不確か」。
同じく『ロングマン』の例文。
Police that there may be further terrorist attacks.
不確かだが、起こりえる、ということ。
定義も、「to feel afraid or worried that something bad may happen」。
解釈は人それぞれです。
今回は保留にしておき、今後の記事で、僕の意見を書きたいと思います。
2011年3月27日 21:21
from 新谷仙蔵
fear thatのthatは接続詞で、以下に従属節として名詞節を導きますが、that以下が確かなことかどうかは、thatに導かれる従属節の内容によるというのが正確です。
can,couldといった助動詞が可能の意味で使われる場合などは、可能性があるというだけで、全然確かではありません。
fear thatの和訳の仕方に関しても、必ずしも「~であることを恐れる」であるとは限りません。
ジーニアス英和大辞典から用例を二つ引用します。
Most people fear that their right to privacy will be threatened by the unauthorized disclosure of information in computer databases.
多くの人々は無断でコンピュータのデータベースの情報が明らかにされることによって自分たちのプライバシーの権利が脅かされるのではないかと恐れている。
Newcomers often fear that the treatment will hurt, but those concerns are quickly allayed.
初めて来た人は痛い治療ではないかと怖がることがあるが、そういった不安はすぐにおさまる。
どちらの例も、「~ではないかと恐れる(怖がる)」と訳しています。
2011年3月28日 07:50
from まさんた
新谷仙蔵さん、こんにちは。
>that以下が確かなことかどうかは、thatに導かれる従属節の内容によるというのが正確です。
全く同感です。
研究社『新英和大辞典(第六版)』でも、「ではないか、~しまいか」との訳語を与えています。
ところで。
fear の訳語、多くは「恐れる・怖がる」と辞書に載っていますが、fear の意味はもっと幅広いような気がします。
齋藤秀三郎『熟語本位 英和中辭典』(大正四年)の訳文。
“(hope に對し)恐れる、気遣う、懸念する、(死ぬかなどと)思ふ、はらはらする。”
中村保男『新編 英和翻訳表現辞典』(2002年)では、「危惧する・案じる・憂える・不安に思う」などの訳語が出てきます。
『英文解釈教室』の例の英文も、「恐れる」よりももっと良い訳語がありそうですね。
そのことは「番外編の番外(後編)」にて書こうと思っています。
2011年3月28日 20:26
from わかくさ
Those ・・・・need not fear that they have lived in vain.の時制がおかしいのではないか、と質問しようと思いましたが、後編で説明があるとのこと、よろしくお願い致します。
2011年4月 6日 10:20
from まさんた
わかくさ さん、はじめまして。
「後編」の前に「中編」が長くなってしまい、「中編 1/2」なる記事を書いています。
が、「後編」は書き終えています。
ただ、「後編」も長い記事になるので、どこを削るか?
「中編」を書き終えたら「後編」(の無駄なところを)を削る作業に。
今のところ、そんな感じです。
2011年4月 7日 22:18