2010年11月18日 Posted by まさんた
that is what it amount to 、代名詞 it、that は何を受けるのか?
またまた伊藤和夫(著)『英文解釈教室』の話です。
今までは、「この参考書は素晴らしいが、の和訳はイマイチ」ということを書いてきました。
今回は、自分が誤読していた、という話(※ 結局は誤読ではなかったのだけれども。矛盾のように聞こえるでしょうが、その理由は記事の最後の頃に)。
誤読していたのは改訂版65ページ、旧版では63ページの次の英文。
Writing for the radio should be as easy as making intelligent conversation, because basically that is what it amounts to.
簡単そうに見える英文ですが、じっくりと考えてみます。
長い返信のまとめ
以前書いた記事『英文解釈教室』に出てくる little traveler って誰?に自由堂さんからコメントを頂きました。
それに対する自分の返事。
※ 本題には関係ないので、忙しい方は飛ばしてください。
返事なのに、長文なので、以下、カットバージョン。
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前後が切り取られた例文は意味がよく分からないときがありますね。
渡部昇一さんもおっしゃっています。
本を読んでいる時は誤訳することのなさそうな文章でも、文法書の例文として前後から切り離されて出された場合は訳すのに苦しむことが時にある。
(中略)長編小説から一行だけ切り取られた例文では、前後関係は確かめようがなく、自信をもって訳せないこともありうる。
―『英文法を撫でる』 74ページ
英語のプロ中のプロの方だってそうなのですから。
自由堂さんも取り上げられた『英文解釈教室』の一文(※■英文解釈考53■英文解釈教室4.2.7修正)
Writing for the radio should be as easy as making intelligent conversation, because basically that is what it amounts to.
この例文は難しいですね。
僕もかなり苦戦しました。
伊藤訳、
放送用の原稿を書くことは、知的な会話をすることと同じようにやさしいことであってよいはずである。なぜなら、基本的には、まさにそれこそ放送用の原稿を書くということの意味だからである。
何度読んでも意味不明。
解説では、
that は making...conversation を、it は Writing for the radio を受ける。
でも逆なのではないかと。受けるものが。
writing for the radio is what making intelligent conversation amounts to.
「ラジオの原稿を書くこと」 とは 「考え抜かれた淀みない会話のつまるところのもの」 である。
超訳気味で冗長ですが、拙訳。
ラジオの原稿を書く際には、考え抜かれた淀みない会話のように、誰にでもわかるように書くべきである。なぜなら、ラジオの原稿を書くとは要するに、淀みない会話をすることそのものなのだ。
自分の勝手な解釈で間違っているとは思いますが、個人的にはこう考えないと意味がスッキリしません。
※ 自分で書いたコメントを読み返してみて、やはり自分の解釈は間違っていると思えてきた。枕と相談します(I will consult with my pillow.)。
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『英文解釈教室』は十年以上にわたり、何度も読んできました。
たぶん、その何回目かで誤読し、それを疑いもせず以後もその通り解釈してきた。
ブログ(のコメント)に書く、ということでいつもより頭を使ったのでしょう。
書いていたら、「ん?なんだかおかしい・・・」と。
もう一度、初めて読むつもりで解釈してみる。
intelligent と easy について
Writing for the radio should be as easy as making intelligent conversation, because basically that is what it amounts to.
【伊藤訳】放送用の原稿を書くことは、知的な会話をすることと同じようにやさしいことであってよいはずである。なぜなら、基本的には、まさにそれこそ放送用の原稿を書くということの意味だからである。
ポイント1 ― intelligent
まずは語句。
intelligent は、ロングマン(4th)によると、
an intelligent comment, question, conversation, etc, shows that you have thought about something carefully and understand well.
となっています。用例として載っている、
a intelligent question
なら、「的を射た質問」となるか。
とにかく、intelligent は「熟考し、よく理解している」という意味。
この単語がこの英文を解釈するポイントのひとつかもしれない。
伊藤訳では「知的な会話」となっていますが、知的な人なら知的な会話ができるでしょうが、だからといって知的な会話が easy とは限らない。
(何かについて)熟考し、よく理解した(人の) conversation なら、easy にことが進むはず。
ポイント2 ― easy
easy の意味が常に「やさしい」とは限らない。
研究社『新英和大辞典(第六版)に次の訳語が載っています。
<談話・文体など>堅苦しくない、わかりやすい、すらすらとした。
この意味でしょうね。
まとめると、making intelligent conversation は「考え抜かれており、相手がすぐ理解できるように会話をすること」。
しかし、問題が。
原文と削除された箇所を()で示すと、
Writing for the radio should be as easy as making intelligent conversation (should be easy), because basically that is what it amounts to.
となるはず。
同等比較(as ~ as ・・・)で削除されるのは、
同等比較(comparison of equality)は、通常、「as + 原級 + as」の形式で表され、比較節の原級は、主節のそれと同一または弁別的にことならない場合は、義務的に表現されない(削除されたのではなく、初めから表現されていないのである)。
Jhon is as tall as Mary (is) [* tall].
(ジョンはメアリーと身長が同じだ)
― 安藤貞雄(著)『現代英文法講義』 P.567
厳密にいえば、「削除される(省略される)」のではなく、「初めから表現されない」ようですが、削除されると考えても学習上、問題ないでしょう。
上の英文で削除(義務的に表現されない)のは、tall。
is は削除してもいいし、しなくても可。普通は省略される。
Writing for the radio should be as easy as making intelligent conversation (should be easy), because basically that is what it amounts to.
接続詞 as 以下を取り出すと、次のような英文ができる。
Making intelligent conversation should be easy.
しかし、これは2つの点でヘンな英文。
意訳すると、
考え抜かれたことについて会話をすることは、わかりやすいべきだ。
まず should について。
これはもともとなかった、と考えるべきだと思います。
つまり、対比しているのは、
Writing for the radio should be easy.
と、
Making intelligent conversation is easy.
さらに。
Making intelligent conversation is easy.
これもおかしい。
考え抜かれたことについて会話をすることは、わかりやすい。
おそらくですが。
「Writing for the radio」という表現に合わせて、「making intelligent conversation」と動名詞にしただけで、本当に比べられている英文は次のようなものなのではないでしょうか?
Intelligent conversations is easy.
考え抜かれた淀みない会話は、聞いていてわかりやすい。
ですから、あの英文は本来はこうなるべき。
Writing for the radio should be as easy as intelligent conversations, because basically that is what it amounts to.
【拙訳】ラジオの原稿は、考え抜かれた淀みない会話と同じように、聞き手に分かりやすいよう書くべきである。
ただ、見た目のインパクトというか、対比するなら同じ形のものを比べたほうが印象深いので、making ~ とした、と考えられる。
どうでしょう?
あるいは、こう考えることもできるかも。
Making intelligent conversation is easy for listener(s).
考え抜いたことを話し合えば、聞いている方は何の曇りもなく理解できる。
暗に、for listener(s)、あるいは for each other がある、と。
こっちかな?
こっちにしときます。
because 以下の that と it が指すものは?
後半部分。
because basically that is what it amounts to.
that や this、it が何を指すか、ある程度決まりはあるようですが、I だったら am、You だったら are のような、文法上のルールというのはない気がします。
日本語でも、「あれ取って」と「それ取って」は微妙ですし。
that、this、it の使い分けについて書くと長くなるので、また別の機会にでも。
さて。
because basically that is what it amounts to.
この that と it が何を受けるのか?
『英文解釈教室』の解説。
that は making...conversation を、it は Writing for the radio を受ける。
その前に、amount to について。
OALD(5th)の定義。
to be equal to or the same as sth.
つまり、
A amount to B.
= A is equal to B.
= A is the same as B.
「A と B は(結局は)同じだ」、ということ。
英英辞典から例文を。
What you say amounts to a direct accusation.
君が言っているのは、まさに、あからさまな非難だ。
― 「OALD」The court's decision amounts to a not guilty verdict.
裁判所がそう決めたことは、無罪判決に等しい。
― 「LDOCE」
そこで、
A is what B amount to.
という形を考えてみる。
これは、根底には次のような形がある。
A is [B amount to C].
C が what になったのが、
A is what B amount to.
上の例文、
What you say amounts to a direct accusation.
「What you say」は「you say something」の something が関係代名詞となったもの。
話を戻して。
A is [B amount to C].
↓
A is what B amount to.
what となって消えた C はなんぞや?といったら、A のこと。
最終的には、次のような形になる。
B amount to A.
英文的におかしいかどうかは別として。
The court's decision amounts to a not guilty verdict.
B amount to A.
この英文は、こう書き換えても意味は(ほぼ)同じ。
A not guilty verdict is what the court's decision amounts to.
A is what B amount to.
このことをふまえ、
because basically that is what it amounts to.
を考えてみる。
とりあえず、basically は無視。
because that is what it ammounts to.
becaus A is what B amount to.
変形。
because it amounts to that.
なぜなら、it は that と同じだからである。because B amount to A.
もう一度、問題の英文。
Writing for the radio should be as easy as making intelligent conversation, because basically that is what it amounts to.
it と that の候補は、
Writing for the radio
making intelligent conversation
この英文を書いた人の主張は、
ラジオの原稿は、聞き手にわかりやすいよう書くべきだ。
でした。
because B (it) amount to A (that).
B に「Writing for the radio」、A に「making intelligent conversation」を入れてみる。
なぜなら、ラジオの原稿を書くということは、考え抜かれた淀みない会話をすることと同じことだからである。
次に、B = 「making intelligent conversation」、A = 「Writing for the radio」としてみる。
なぜなら、考え抜かれた淀みない会話をするということは、ラジオの原稿を書くことと同じだからである。
basically を入れて、作者の主張とつなげてみる。
【1】
ラジオの原稿は、聞き手にわかりやすいよう書くべきだ。なぜなら、根本的には、ラジオの原稿を書くということは、考え抜かれた淀みない会話をすることと同じことだからである。【2】
ラジオの原稿は、聞き手にわかりやすいよう書くべきだ。なぜなら、根本的には、考え抜かれた淀みない会話をするということは、ラジオの原稿を書くことと同じだからである。
論理的には、【1】のほうが自然。
伊藤和夫の解説、
that は making...conversation を、it は Writing for the radio を受ける。
は正しかった。
自分はコメントで、「でも逆なのではないかと。受けるものが」と書きました。
が、その下をみると、
writing for the radio is what making intelligent conversation amounts to.
「ラジオの原稿を書くこと」 とは 「考え抜かれた淀みない会話のつまるところのもの」 である。
と書き、「拙訳」はこうなっている。
ラジオの原稿を書く際には、考え抜かれた淀みない会話のように、誰にでもわかるように書くべきである。なぜなら、ラジオの原稿を書くとは要するに、淀みない会話をすることそのものなのだ。
自分の勝手な解釈で間違っているとは思いますが、個人的にはこう考えないと意味がスッキリしません。
つまり、伊藤和夫の解説、
that は making...conversation を、it は Writing for the radio を受ける。
に反対しながら、自分でもそう解釈していた。
あのとき僕の頭の中は、どうなっていたのだろう?
たぶん、あの直前、誰かにメダパニを唱えられたのでしょう。
犯人は隣で飛び跳ねている、はぐれメタルか?
最後に、英文と伊藤和夫訳、自分の拙訳を。
Writing for the radio should be as easy as making intelligent conversation, because basically that is what it amounts to.
【伊藤訳】
放送用の原稿を書くことは、知的な会話をすることと同じようにやさしいことであってよいはずである。なぜなら、基本的には、まさにそれこそ放送用の原稿を書くということの意味だからである。【拙訳】
ラジオの原稿を書く際には、考え抜かれた淀みない会話のように、誰にでもわかるように書くことが大切である。なぜなら、ラジオの原稿を書くことの根底は、つまるところ、そのような会話をすることと同じなのであるから。


コメント
from 新谷仙蔵
that is what it amounts to.
の部分について私なりに分析します。
whatは関係代名詞で先行詞が含まれる、すなわちsomething whichで置き換えられます。
したがって、次のようにパラフレーズできます。
that is something which it amount to.
さらにwhichについて考えると、先行詞をsomethingとし、しかもamount toの部分の前置詞toの目的語となります。
関係代名詞の役割はだいたい接続詞+代名詞に置き換えられますから、仮に接続詞の部分をandにするとして、さらに次のようにパラフレーズできます。(ここは限定用法なので、厳密には少し意味がずれますが)
that is something and it amount to something.
そこで、thatが指す可能性のある語がwriting for the radioかmaking intelligent conversationしかないということですが、そうすると、指示代名詞thatが「心理的に遠いものを指す」という原則から考え、thatはwriting for the radioに置き換えられると考えられます。(ここが私と、まさんたさんや伊藤和夫先生との意見が分かれるところです。)
当然ながら,私はitをmaking intelligent conversationと解しますから、次のような文章ができあがります。
Writing for the radio is something and making intelligent conversation amount to something.
逐語的に、しかも訳語もあまりこだわらずに訳すと、「ラジオのために書くことは何がしかの事であり、そして知的な会話は何がしかの事にあたる。」
すこしこなれた訳にすると、「ラジオのために書くことは、つまり知的な会話をすることと同じである。」となります。
ちなみに、全体についての私なりの訳は次のようになります。
「ラジオの台本は、気のきいた会話をするのと同じように肩肘張らずに書いた方がいい。なぜならラジオの台本を書くというのは結局は気のきいた会話をするのと同じようなものだから。」
以下、訳語について少し解説します。
easyを「肩肘張らずに」、intelligentを「気のきいた」と考えました。いずれもある英和辞典に記載されている、ある意味典型的と言える訳語をそのまま採りました。
shouldは受験英語では「・・・すべきだ」と訳しますが、実際は非難やいら立ちの感情が含まれるhad betterよりかなりニュアンスが柔らかいので、むしろ「・・・した方がよい。」と訳した方がよい場合が多いです。
2010年11月19日 03:41
from まさんた
新谷仙蔵さん、こんにちは。
難しい問題ですね・・・。
確かに that は「心理的に遠いものを指す」というのが一般的だとは思いますが、どこまでその原則が厳密に守られているのか、ちょっとわかりません。
easy や intelligent や easy の訳語は、この英文だけでしたら千差万別に訳せるでしょう。
もちろん、easy を「やさしい」とするのは問題アリだと思いますが。
intelligent をくどくどしく「考え抜かれた淀みない」としたのは、この論文?「The writing for the radio」の中で、著者が「書く前に良く考えろ、でないと自信を持ってスラスラ話せない」のようなことを何度も主張していたから。
easy については以前も引用しましたが、
要するに、相手にきちんと伝わるように話せ、と書かれていたので、「わかりやすく」としました。
should をいつも「べき」と訳す伝統はヤメたほうがいいと思います。
でも、
の場合、「べき」を通り越して「なければならない」となったりするので、臨機応変さも必要かと。
that と it が何を指すのか?については今は深入りせず、後でまた考えてみます。
2010年11月19日 20:01