だから英文法に賛成する(2)~「どうもエライ人の語学上達法というのは・・・」

だから英文法に賛成する(1)~反「多読」英語勉強法の続きです。

「多読の効用」について書こうと思っていましたが、ここ数日、いろいろと「英語教育」についての記事が目に付きまして。

毎年のように「学校英語賛成派」と「反対派」の論争が起きますね。

結果として、良い方向に向かってくれればいいと思いますが。

今回は、「英文法は不要、辞書は引くな」と主張されている方々の主張を見ると、「何かがスッポリと抜けている」という話。

松本茂さんと茂木健一郎さんの「英語の学習法」

8月4日の朝日新聞に、英語教育について松本茂さんと大津由紀雄さんの論争?が取り上げられたそうです。
【参照】 今日の朝日新聞は英語教育特集!?

朝日の記事は読んでいないので、どんな論争だったかは分かりません。
松本茂さんのお考えは、松本茂先生メッセージに書いてあります。

気になったのは、松本さんの高校時代の話。
以下、上記ページより引用。

高校の時はね、英語が好きじゃなかったんです。完全に落ちこぼれだったんです。担当の先生は、僕にあてると時間がかかるから、僕を飛ばして後ろの人をあててた(笑)。

そして、

でも高3になって、大学生のディベートを見る機会があって・・・

それからは英語学習への意欲も方法も変わりました。ラジオ英会話を聞いたり、英字新聞を読んでみたり、英語が得意な人に発音を直してもらったり。すると3カ月ぐらいで、学校の英語の授業で目立つようになった。

本当の話だとは思いますが、引っかかる点が。

完全に落ちこぼれだった
 
英字新聞を読んでみたり」

考えられるとすれば、松本さんのいう「完全な落ちこぼれ」の定義が、世間一般のそれとはだいぶ違うのでしょう。

推測になってしまいますが、英字新聞を読む前に、松本さんは英文法の骨子を理解していたし、語彙力も相当あった。

じゃないと、英字新聞など読めないと思うんですが。

※ 補足 高校の授業で、「英語でプレゼンテーション?」

普通、英語が使えるようになる流れはこうでしょう。

1・英語の知識ゼロ。
 ↓
2・中学や高校で、英文法や英文解釈の勉強をする。
 ↓
3・それでも実践には歯が立たないので、さらに勉強。
(洋書や英字新聞を読んだり、英語をたくさん聞いたり)
 ↓
4・数年後、やっと実践の英語へ。

どうも偉い人たちの話を聞くと、「2」の段階がスッポリと抜けている。

つい最近、はてなブックマークで話題になった茂木健一郎さんの「英語の学習法」も同じ。
茂木さんの twitter での「つぶやき」をまとめてくださったブログがあります。
茂木健一郎流「英語の学習法」 - さまざまなめりっと

英文法を学んだり、辞書で単語の意味を調べたりすることに対する記述は一切なし。

それどころか、

英語(8)
学習者向けの、つまらぬ英文を読むな。本物の、魅了ある英文を読め。英語学習を、くだらぬ点取りゲームにしているのは誰か。そんなものは無視しろ。

英語(9)
とにかく辞書なしで、ペーパーバック一冊を読め。最初は頭の中のボルトとナットが油ぎれでぎいぎいいって苦しいが、そのうちすっと回るようになる。

だが、茂木さんも、高校時代、大学入試のため「くだらぬ点取りゲーム」に参加したはず。

そこがスッポリ抜けている。

英語の学習法でこういう意見を言えるのは、前提として日本人の多くが「くだらぬ点取りゲーム」のおかげで、英文法の知識や語彙力があるから。

「英語」を他の言語に置き換えてみる。

キリスト教を学ぶなら、『旧約聖書』はヘブライ語の原典で、『新約聖書』はギリシャ語の原典で読まなければダメだ。
ただし、参考書で文法を学んだり、辞書を引いたりするな。
読んでいれば自然に意味が分かってくる。

こんな発言をしても、誰にも相手にされないでしょう。

茂木さんのもう一つの「つぶやき」。

英語(11)
遅く始めても修得できる。Joseph Conradは、20歳を過ぎてから初めて英語という言語に接した。それから修得して、英語の小説を書いた。代表作Heart of darkness(映画『地獄の黙示録』の原作)は、英文学史に残る傑作となった。

「遅く始めても修得できる」には賛成する面もありますが、その代表として、ジョゼフ・コンラッド(Joseph Conrad)をあげるのはどうかと。

Wikipedia のジョゼフ・コンラッドのページの記述。

幼少期から青年期に至るまで、ロシア語、ポーランド語、フランス語を使用し・・・

コンラッドはもともと polyglot であったし、「才能」という要素も大きいと思う。

日本人で20歳を過ぎるまで全く英語に接したことがない人は、おそらく他の言語に接したこともないでしょう。

そもそも前提が違う。

花は根を忘れる

平泉渉・渡部昇一『英語教育大論争』にこんな記述があります。

鈴木孝夫さんと平泉渉さんの対談で、「英字新聞やフランスの新聞を読むと、語学力がつく」という話についての、渡部昇一さんの意見。

もちろん私はこの二人のお話は本当だろうと思っている。
しかしここには絶対に落としてはならない保留条項が付いているのだ。
鈴木氏にしろ、平泉氏にしろ、新聞をすみからすみまで読む修業をしたのは何歳の時か、ということである。
いずれも大学卒業後何年も経ってからである。
両氏とも伝統文法の骨骼(こっかく)は何年も前に出来上がっており、むしろ文法の末梢部分まで知っておられたのである。
そこに必要なのは語彙だけだったのだ。

まさか日本の中学生や高校生にいきなり英字新聞をすみからすみまで読ませて数カ月で英語がパッと読めるようになるだろうとは両氏とも思っておられないであろう。
実際そう信じておられるなら御自分の子供で試してみられればよい。

どうも「豪(えら)い人」の語学上達法というのは、睡蓮(すいれん)の花がパッと美しく咲いたところだけを取り上げて、「睡蓮はかくあるべき」などと言っておられるところがある。
睡蓮には泥の中に張っている根もあり、水の中にのびている長い茎もあり、水の上に広がっている葉もある。
それがなければある朝、突然に紅色の睡蓮がパッと咲くことはないのだ。

学校教育の伝統文法は泥の中の根だ。
花は根を忘れるものらしいけれども、根がプライドを捨てることはない。

「根がプライドを捨てることはない」とは、次のこと。

英語教師は ― 繰り返していうが ― 自信を持って生徒に文法をこね廻させてよいのである。
そして教師がこの面での学力と自信を欠けば、それこそ禍(わざわい)なるかな、である。

どうも華々しく活躍している方たちは、根(伝統文法)を学んだ過去を忘れるようでして。

《続く》

コメント

from Junpei

英語学習法について書いた本はみんな同じようなものですよ。
しっかりコツコツ学びましょう。と書いてあったらみんな買いませんよ。
「勉強するな」
「辞書ひくな」
な~んて安易な言葉に弱いものです。
学習している人であれば、読めばそんなはずないだろう。抜け落ちている部分に気づくけど、勉強しない人はそんなことも読み取れないのではないかな?

英字新聞だって、いろんな記事について日本語で理解する力がなければ読めるはずないものね。
つまり日ごろ新聞を読まない人は、英字新聞を読めるはずないということです。

結局、コツコツ学習するしか道はないのかもしれません。

昨日アメリカ人とビールを飲みながらワードパズルの雑誌で遊んでいたんですが、結構おもしろかったです。数ある単語の中から仲間を3つ探して、どこにも入らない単語をつなげて文章を作るとか、他にもいろんな言葉パズルがあって頭の体操になりました。
わからない単語は彼に聞いて、英語で聞いてその意味を考える。辞書はありませんから考えるしかないです。

from 匿名

I quite agree.文法を学んだ事を忘れちゃうほど習熟しているということでしょう。.

from まさんた

Junpei さん、こんにちは。

ホント、日本の新聞を読んでいないと、英字新聞は読めません。

洋書の小説や専門書は意識的にか無意識にか、自分が読めそうなものしか手を伸ばしませんが、新聞は向こうから知らない話題を押し付けてくる。

昔、『英語は絶対、勉強するな!』という本がベストセラーになりましたが、本屋で立ち読みしたら、「結局は勉強しろ!」的な内容でした。
「英語をたくさん聴けばよい」とか。
日本人にとって、「英語を聴く」ことも「勉強」の範疇に入ると思うのですが。

あの、英単語のパズル、アメリカ人(イギリス人?)は好きですね。電車とかで黙々とパズルを解いている姿をたまに見ます。
たまにといっても、まあ、年に一回あるかないか、ですけど。

英語の雑誌にも、パズルがオマケのように付いていたりしますね。
以前、メジャーリーグの雑誌を買ったら、パズルがありました。

最近は日本でも穴埋めパズルが大人気で本屋にたくさん並んでいます。

from まさんた

匿名さん、こんには(何か違和感)。

>文法を学んだ事を忘れちゃうほど習熟しているということでしょう。

そうかもしれませんね。
ただ、読んだ人が「文法は不必要」と思ってしまうなら、ちょっと・・・。

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