英語の冠詞、a と the と、単数・複数

次の英文は、『我輩は猫である』の英訳、『I Am a Cat』の冒頭部分。

I am a cat. As yet I have no name. I've no idea where I was born.

猫でもデキる冠詞、単数・複数の使い分け。
だが、人間様(born and bred in Japan)には困難極まりない。

「桃栗三年柿八年」をもじって、

前置詞三年、冠詞八年。

なんて言われますが、8年じゃ、とても無理でしょ。
名無しの猫さんとは違って。

「ない」のに、なぜ複数?

マーク・ピーターセン(著)『日本人の英語』を読んで、冠詞、単数・複数の重要さに目覚めた人、そうとういるでしょう。

で、同書にこんなことが書いてあります。

これは少し個人的な例であるが、私は、日本にきたばかりのころ、次の日本語をふと耳にして驚いたことがある。「あの人は思いやりがなさすぎますよ」。その表現を聞いて、日本語としては、何かが「なさすぎる」という言い方が許されていることを初めて知った。「なさすぎる」はどう考えても英語にはならないので、強いフラストレーションをかんじ、そのころ私の国文学の先生のところまで文句を言いにいった。

「『ない』は『何もない』という意味ではないか、『ゼロ』ではないか。『なさ』に度合いがあるか。もし何かが『少なすぎる』というのならわかるが、『なさすぎる』なんて、どうしても私に納得できないことである。英語は決してそういう非論理的な言い方を許さない。」というようなことを言ったら、先生は「まあ、英語はよくわからないが、『ない』という日本語は『ゼロ』じゃない」と教えてくれた。

日本語の、『ない』。考えてみれば、むずかしいですね。

あの人は思いやりがない

あの人は思いやりがなさすぎる

『雨ニモマケズ』はその典型ですが、日本語は構文上、最後まで読まないと意味がはっきりしない。
特に、英語と違って、日本語では否定語は最後に置かれます。

あの人は思いやりが(ある/ない)。

極端に言えば、日本語で重要なのは、最後の部分。

『なさすぎる』の場合も、焦点があるのは、『ない』よりも『すぎる』。
英語でいうところの、too ~ (to do) 構文のような感じ。
まあ、深入りは、ヤメておきます。

ところで。

冒頭の猫の台詞。

I've no idea where I was born.

「I have no idea.」 は、「わからない(I don't know)」。

ですが、「(良い)アイデアが(浮かば)ない」という場合、

I have no (good) ideas.

と、複数形(ideas)になります。

むかし、ちょっと疑問に思い、ピーターセンさんではないですが、言いたくなった。

『ない』は『何もない』という意味ではないか、『ゼロ』ではないか。

なんで、『ない』のに複数形なの?

まあ、先生に質問をしに行くには情熱がなさすぎたので、一応、こんな風に解釈し、納得しました。

a good idea は、1つとは限らない。ある意味、無数にある。

  • a good idea アグライディアその1
  • a good idea アグライディアその2
  • 以下、上に同じ。

それらを、全部ひっくるめて、no という強烈な力をもつ単語で否定する。

I have no (good) ideas.

さて。

猫ちゃんの二つ目の言葉。

As yet I have no name.

名前というのは、普通、1個しかありません。だから、name と単数。

兄弟とか、子どもとか、友だちとか、2人以上いてもおかしくない場合、複数を使うことが多い気がします。

He has no brothers.
They have no children.
I have no friends.

複数じゃないときもありますが、たいてい、複数でしょう。

余談ですが。

「友だち」という場合、a friend of mine としなければならない、と辞書や文法書に書いてありますね。
my friend というと、唯一の友だちの意味になってしまう、と。

ですが、

This is my friend Tom.
こいつは俺の友だちのトムだ。

とか、

she went shopping with her friend.
あの子、友だちと買い物に行っちゃったよ。

とか、普通に聞きません?

そして、聞いた(読んだ)ほうとしては、「唯一の友だち」じゃなく、「友だちの中の1人」と受け取ると思うんですが。

どうでしょう?

医者は人間にあらず?

風邪なり、体調が悪い人がいます。

「お医者さんに診てもらえば?」とも言いますが、「病院に行ったほうがいいよ」が日本語の慣用?として普通でしょう。

一方、英語で、

go to the hospital
go to a hospital
go to hospital

というと、「入院する」です。

「病院に行って、診察してもらう」なら、

go to the doctor
see a [the] doctor

ところで。

英語の doctor は、人なのか?

津守光太(著)『a と the の底力』に、こんなことが書いてあります。

《問題》 次の( )内に入れるのに適切な単語を選びなさい。

He is not the good doctor (that/whom/who) he used to be.
(彼は以前のような良い医者ではない)

(答え : that)

解説。

この文で、ネイティブスピーカーが doctor という名詞の中に見ているのはあ、「人間」ではなく「職業」なのです。だから、who/whom ではなく、that を使います。「以前のような良い医者ではない」というのは、あくまで「職業人」としての彼、つまり彼の職業に焦点が当てられているのです。

職業だけでなく、性格なんかもそうですね。

He is not the man that he used to be.
あいつはもう変わっちまったよ。

まあ、こういう場合、ほぼ 100%、that は省略されますが。

a cat と the cat

さて。また、名無しの猫さん登場。

I am a cat.

もし、『I Am a Cat』を読んでいる人がいて、この名無しの猫が現れ、自己紹介する。
その場合、この名無しの猫はなんというでしょうか?

I am the cat.

I am a cat. だと、

猫がしゃべった!

という驚きだけですが、

I am the cat.

なら、

猫がしゃべった! しかもこの小説の主人公の猫なのかい!

と、驚き2倍。

さらに。

『I Am a Cat』を読んでいない人の前に、猫登場。

I am the cat.

としゃべったら?

猫がしゃべった! そして・・・どの猫?

と、驚きと疑問の声が。

ところで。

I am a cat.

の a は、猫はたくさんいるが、その中の一匹、を意味します。

場面によっては、「お前は犬?」と聞かれ、「違う、猫」という意味にもとれるでしょうが。

cat、a と the によって、七変化

同じ文でも、場面(文脈)によって、意味が変わります。

I have a cat.

1・私は猫を(1匹)飼っている。

2・私が飼っているのは(一匹の)猫で、他の動物ではない。

じゃあ、

He has a cat.

ならば?

1・彼は猫を飼っている、ただし、私はその猫を見たことはない。

2・彼は猫を飼っている、そして、私はその猫を見たことがある。

3・彼が飼っているのは猫で、他の動物ではない。

2ですが、発言者がその猫を知っていても a cat なのは、この発言を聞いた人は知らないから。

もし、テレビなどで有名になった猫がいて、

ああ、彼が飼い主だよ。

というなら、

He has the cat.

となるでしょう。

まずは、冠詞の基本から

新津信治・里中哲彦(著)『たたかう英文法』に、こんなことが書いてあります。

新津:あるネイティブ・スピーカーに、冠詞の使いわけがキチンとできんとマズイやろかと聞いたことがあるけど、アッサリとね、冠詞をマスターするのに時間をかけるなんて、a waste of time (時間の無駄)やと言われたこともあるしね・・・

ですけど、冠詞の使い方の基本は覚えていたほうがいいと思います。

わかりやすいのは、先ほど紹介した、津守光太(著)『a と the の底力』。
著者が予備校の先生だけあって、解説は(くどいほど)懇切丁寧。

ときに我田引水?な説明もありますが。

「He took her by the arm.」について、

「腕をつかむときに、つかむ目的は、彼女を行かせないこと。

と説明がありますが、歴史的にみると、この構文はドイツ語の名残り。

「at night」について、

「眠っている時間は、『幅のない時間(点)』なので at。(途中略)朝や昼とは対置できない。そこで night には the は付けずに at night となる。

と説明されていますが、歴史的にみると、もともと「at the night」だったのが、口調の関係で the が at に吸収され、the が消えた。

そんなところもありますが、高校生や、今まで冠詞についてあまり考えていなかった人にオススメです。
一番わかりやすい。

冠詞については、まず基本をおさえ、あとは英語を読んでいるとき、

なぜ the が付くんだろう?
なぜここは複数形なのだろう?

と考えることですかね。

コメント

from Junpei

復活されていたんですね。
最近 同じブログばかりのぞいていたので
気づきませんでした。

aとtheって日本人にそういう観念がないので
使い分けるようになるのってかなり大変ですよね。
たぶん賢い人なら頭で論理的にわかっているから、受験などで失敗はないだろうけど、実際に英語をペラペラ話しはじめたとき、すごい抜け落ちて恥ずかしい思いをするかもしれません。
だから間違っていると思ったときは、必ず言い直すようにしています。
周りにいる友達が英語の先生やジャーナリストなど言葉にこだわる職業が多いので、まじめにつきあってくれるのでいいですよ。
そのうち、間違えて使ったとき自分でもおかしいと感じるようになるのがおもしろいですね。

from まさんた

Junpei さん、こんにちは。

ひっそりと、復活しました。

冠詞はホント難しいですね。自分は冠詞をきちんと使いこなすことは、半分あきらめてます。

それに、冠詞の使い方は厳格なルールがあるようで、ないようで。

昔は listen to the radio と、the を付けるように教わりましたが、最近は the なしもよく見かけます。

で、Native Checker というサイト(http://native-checker.com/)で調べたところ、

listen to the radio - 3,730,074 件
listen to radio - 3,240,044 件

との数字が。

かなり拮抗。近い将来、the なしが抜く予感。

When I was young I'd listen to the radio Waitin' for my favorite songs

何十年後には、ネイティヴでさえ、なんで radio に the が付くの?
その radio でどれよ?となるかも。

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