英和辞典、英英辞典の使い方(前編)

愛用している『ロングマン英英辞典 (Longman Dictionary of Contemporary English)』の背表紙がとれて、早一年。

背表紙はがれたLongman

辞書に限らず、洋モノの本は装丁がマズイ。日本の本は、どんなに中身が薄っぺらな本でも、装丁だけはしっかりしているのに。

英英辞書にもいろいろあり

Longman、5訂版(Fifth Edition)も出たことだし、買い換えようかと。

今までは Oxford と Longman を比べ、良いほうを買っていました。
でも、今度は『コウビルド』にしようかな、と思案中。

いま読んでいる、河野一郎(著)『誤訳をしない人のための翻訳英和辞典』では、『コウビルド』からの引用が多い。

ある表現が native speaker によってどのように受け取られているかの解説では、『コウビルド』の右に出るものはない。

だからだそうです。

続いて、同著者の『翻訳のおきて』から引用。
同じ単語でも、イギリスとアメリカでは意味が違うことがある、という話。
長いですが。

たとえば fresh という語は、英国の辞書 Cobuild (『コウビルド英英辞典』)には "If You describe something as fresh, you mean that it is pleasant, bright, and clean in appearance." とあるのに対し、アメリカ系のランダムハウスには、「ずうずうしい、なまいきな、(異性に)なれなれしい」という訳があがっており、実際この意味でよく使われます。

むかし学生時代に英語のクラスで先生から聞いた笑い話に、アメリカへ行ったある英国人が食堂のウェイトレスにお世辞のつもりで、"You look quite fresh." (とてもいきいきとして元気そう)と言ったところ、相手がむっとしたようすなのであわてて、"And homely (とても家庭的でやさしい)とつけ加えたところ、とうとうすっかり機嫌をそこれられてしまった―というのがありましたが、今『コウビルド英英辞典』をあらためて引いてみると、

In British English, if you describe a woman as homely, you mean that she has a warm, comforting manner and looks like someone who would enjoy being at home and running a family.

In American English, if you say that someone is homely, you mean that they are not very attractive to look at.

と違いが明記されています。

Longman の定義

自分が持っている、Longman(4訂版)の homely の定義。
3つありますが、該当する2つの定義を。
例文は省略。
※ BrE はイギリスの用法。AmE はアメリカの用法。

BrE a homely person is warm and friendly and enjoys home life:
AmE not very attractive;= plain BrE

Cobuild と比べて、Longman の定義はあっさり。
でも十分意味はわかります。

好みの問題、ですかね。

余談ですが。

自分が英文学の古典を読む際、もっぱら使うのは、開拓社の『新英英大辞典』(1942年刊)。

「大」といっても、とってもコンパクトな辞典です。

その homely の定義。

(3) (chiefly U.S.A , of people) plain-featured.

発刊後、70年近く経つが、これだから手放せない。

英和辞典も負けていない!

homely を英和辞典(ジーニアス英和辞典)で調べてみます。

(1)(・・・途中略・・・);《英》<食事などが>おいしい;質素な;地味な;<人が>素朴な、気取らない;<女性が>家庭的な、温かく親しみやすい。
(2)《米》<女性などが>容貌の平凡な(plain)(対義語 attractive)《◆ ugly の遠回し語》。

説明として、英英辞典と遜色ない。

英英辞典も、英和辞典も、読まなければ意味がない

松本安弘・松本アイリン(著)『英語の名教授』にこういう記述があります。

まず、英和辞典の boyfriend の訳がおかしい、と指摘。
次に、『コウビルド』の boyfriend の定義を載せ、

つまり、英語で boyfriend とは、ステディーに交際をしているか、結婚に近い関係、あるいは肉体関係のある男友だちを指して使う語であることがわかります。
その女性の単なる男友だちの意味では a friend of mine といいます。

『英語の名教授』より7年前に出た『ジーニアス英和辞典(第一版)』の記述。

boyfriend 《略式》(女の側から見た)男の恋人、男友だち、ボーイフレンド《◆通例性的な関係を含意するので、単なる男友だちをいう場合は He is a friend (of mine). などが無難。

読めば、きちんと書いてある。

英和辞典にも、いいものと、悪いものがあるのは当然。
英和辞典批判をする人は、なぜか悪いものを例としてあげる。

酒井邦秀(著)『どうして英語が使えない?』(1991年刊)。

英和辞典の中には、『ライトハウス英和辞典』(研究社)のように、

「高い鼻」は普通 a high nose といわず、a long [large] nose という。同様に「低い鼻」は a low nose ではなく、a short [small] nose という。

といった丁寧な解説をつけたものもありますが、これも昔からある誤解の代表例でしょう。

その3年前に出た、同じく『ジーニアス』の解説。

a flat nose ぺちゃんこの鼻。
a large [long] nose 大きい[高い]鼻《◆英米では鼻の「高」「低」をあまり問題にしない。あえて a high [low] nose といえば鼻の位置が高い[低い]ことをさす》

引用はしませんが、最新の『ジーニアス英和辞典(第四版)』では、さらに解説が詳しくなっています。

英英・英和とも、時代とともに必ず進化する。

「進化」というと、大げさですが、良くなっていくのは間違いない。

問題なのは・・・

大学受験勉強中は、辞書を使っても、代表的な意味を覚えるだけで、せいいっぱい。

原書を読み始めても、受験生と同じように知らない単語(難しい単語)だけ辞書で調べる。

そこに問題があるのではないかと。

たとえば。

blue jokes
blue films

ブルーなんて、小学生でも知っているはず。
でも、大人になって blue を辞書で調べるなんて人はあまりいないでしょう。

『ジーニアス(第四版)』をみると、

(4)《略式》わいせつな、エロの。blue jokes わい談。blue [×pink] films [movies] ピンク映画。

「ピンク映画」は死語に近いと思いますが・・・。

卑猥な blue を英英辞典(Longman)で。

informal) blue jokes, stories etc are about sex, in a way that might offend some people

blue movie a film that shows a lot of sexual activity

英和辞典も、英英辞典も、本当に良く出来ている。
問題なのは、それを使いこなしていないこと(自戒の意味も込めて)。

英語を読むには、まず、(受験勉強的な)英文解釈的読み方をする。
次に、原書を辞書を引きながら読む。
慣れたら、辞書をあまり引かずに多読する。
そのあと、辞書を読むために原書を読む。

このプロセスを終えたあとでしょうね。本当に英語がスラスラ読めるようになるのは。

辞書などいらぬ、という天才なら、辞書なしでも、すぐに読めるようになるかもしれませんが。

凡人の1人として言わせてもらえば、辞書はとっても役に立ちます。

(後編)は、どういうときに英和辞典を使うか?
英英辞典を使うときは? について。凡人の意見を。

コメント

from Junpei642

私のOxfordもぼろぼろなので買い換えたいのですが、Longmanでいいかしら?
それともCobuildがいいかしら?
とかなんとかいいながら、ついついオンラインの辞書を使ってしまいます。
うちの娘も本の辞書はほとんど使わないので、今回の引越しが終わって、彼女の本棚に入っていた辞書類がすべて私の本棚に押し込められていました。
もちろん辞書はひきますが、すべてオンラインだそうです。
日本語を教えているフレンチの高校生も同じだそうです。
辞書をひらくのって楽しいのにねえ。

しかし私にはもう一つ問題があります。
辞書の文字がめがね無しで読めないので、めがねと辞書はなるべく近くに置いておかないとだめですね。

from まさんた

Junpei642 さん、こんにちは。

自分はもっぱら、紙の辞書派です。
紙なら、「ついで見」ができるので。
たとえば、prevail を調べたら、同じページに派生語 prevailing, prevalence, prevalent が載っていてるので、ついでに見ることができる。

CD-ROM の辞書も使いますが、発音の確認ぐらいですかね。
オンライン辞書は、例文が少ないので ほとんど使いません。

日本でも最近の高校生や大学生は電子辞書を使う傾向にある、と聞きました。
使っているうちに、手に馴染む紙の辞書の良さ、なんともいえないのに。

Cobuild、前から気になっていたんですが、編集方針が変わってまして。
品詞でまとめるのではなく、徹底した頻度順。
pretty なら、形容詞 pretty 「かわいらしい」が最初、次に副詞の「かなり」が来て、また形容詞に戻って・・・という感じ。

matter のような多義語はかなりゴチャゴチャとした印象(立ち読みした感想ですが)。
やっぱり、自分も Longman にするかな・・・と思案中。

余談ですが、この前、研究社の『新英和大辞典』に酒を飲ましてしまいました。ページがくっつき、はがすとビリビリと破れ・・・。
紙の辞書は、酒をこぼしたときに弱い、というのが弱点ですね・・・。

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