牛にまつわる、英語のエトセトラ

英語では、牛を意味する英単語がたくさんありますね。

cow, bull, ox などなど。

つづりが全く違うので、覚えるのが大変。
その点、日本語は簡単。
前に何かをつければいいだけですから。

乳牛、闘牛、雄牛、雌牛、ギニュー特戦隊、など。

今回は、英語の「牛」について。

なんで牛? とは、聞かぬこと。

cattle

以下、ジーアス英和辞典、Longman 、OED、英語語源辞典などを参考にしました。

cattle

人間に飼われている、いわゆる畜牛の総称。

cows and bulls kept on a farm for their meat or milk
―「Longman」

【語源】
面白いことに、capital (首都・大文字・資本)と同じで、cattle 自体、最初は「財産」という意味でした。

牧畜文化でしたからね。
財産?オラんちには、牛しかねーよ。

その後、家畜、畜牛という意味が生まれました。

余談ですが、さらに語源をたどると、「ラテン語 caput (頭 =head)→ 印欧祖語 kaput (頭 =head)」になります。

この語源から生まれた言葉はたくさんあります。
cap、captain、chief、chapter など。

chief などはフランス語経由で英語に入って来たので、形がちょっと変わりましたけど。

「頭」は人間の一番上にありますから、「上位の~、最初の~」という意味が生まれたのでしょう。
「組頭・頭取」など、日本語でもトップの人に「頭」を使うことがあります。

意外なところでは、mischievous (いたづらな)などもありますが、なぜそうなったかは長くなるので省略。

ちょっとだけ書けば、mis-(ダメな)+ chief (指導者)→ 損害 → 災害のもと → 迷惑な → いたづら、形容詞化で、mischievous、という感じ。

cow

cow

メスの牛で、乳牛、そして、おいちぃステーキにもなったり。

a large female animal that is kept on farms and used to produce milk or meat
―「Longman」

オスでも cow を使うことがあるようです。

a male or female animal of this type
―「Longman」

(年齢・性に関係なく家畜としての)牛(cattle).
―研究社「新英和大辞典」

【語源】
印欧祖語の gwou- で、意味は「牛」。
gwou- → ko(u)z → cu → cow と変化。

これは、なんとなくわかる。

でもビックリなのが、beef (牛肉)の語源も cow と同じだ、ってこと。

見た目、まったく違うのに。

beef はフランス語・ラテン語の血が入っている外来語。

gwou- → ラテン語 bos → 古仏語 boef → 中期英語 bef, boef → beef。

ぅん・・・ラテン語に入るとき、何が起きた?

それはともかく。

大ベストセラー、マーク・ピーターセンさんの『日本人の英語』に、eat a chicken とは言えない、という話が載っていますね。

不定冠詞なしの eat chicken じゃなくてはダメだと。

a chicken一匹のニワトリ
chicken鶏肉

牛を食べる

でも。

ニワトリと違って、英語で「牛を食べる」という場合、eat a cow はもちろん、eat cow もダメでしょう。

I ate (a) cow last night.

eat a cow だと、一匹の生きた牛をムシャムシャ食べる。

eat cow なら、生臭い牛の肉片を食べる、というニュアンスになるのでしょうか?

ライオンならともかく、人間なら、やはり eat beef としなければ。

豚でもそう。

eat (a) pig はダメ。

eat pork にしなくちゃ。

chicken は冠詞なしなら鶏肉となるのに、牛や豚はダメ。

ややこしいですね。

その原因といえば、時は11世紀後半、所はイギリスの・・・

・・・

・・・(以下略)。

というわけで、フランスのノルマンディー公がイギリスを征服したから。

宮廷は当然、フランス語。

このとき、どっとフランス語が英語に入ってきました。

牛や豚以外でも、いざ肉となると、違う英単語になる動物はたくさんいます。

動物名生きているときお肉になったとき
sheepmutton
子牛calfveal
シカdeervenison

など。

でも、ノルマン朝時代、そしてその後しばらくは、一般庶民は eat cow、eat pig と言っていたと思うんですけどね。

おふら~んす語なんて知らなかっただろうし。

どうなんでしょう?

『英語語源辞典』に次の記述があります。
「これ」というのは肉になると名前が変わること。

Sir Walter Scott が Ivanhoe でこれを一般的にしたと言われている.

サー・ウォルター・スコットといえば、18世紀後半から19世紀前半にかけて生きた人。

eat cow。その頃までは許されていたのでしょうかね。

どうなんでしょう?

bull

bull

Longman の定義。

an adult male animal of the cattle family

(大人になった)オスの牛。

英和辞書だと必ず、

去勢していない

旨を書いてありますが、Longman は無視。

日本は古来、中国のいろいろな制度を取り入れていましたが、宦官(eunuch)制度は輸入しませんでしたね。

そのぶん、大奥なんていうものが暗躍しましたが。

話戻って。

マーケット用語に次のような言葉がありますね。

  • bull market 買い市場・強気相場
  • bear market 売り市場・弱気相場

bull は、わかる。強気なのは。

でも bear(クマ)が何で弱気・売り?

と思い、語源辞典を見る。

株式用語で「値下がりを見越して思惑売りをする人」の意は18C半からで to sell the skin before one has killed a bear 「取らぬ狸の皮算用」の諺に由来する。最初(18C初)はそのように売買される株を指した。

(五分ほど考えて)なるほど。

ox

ox

Longman の定義。

a bull whose sex organs have been removed, often used for working on farms

去勢した雄牛で、農耕のために、毎日、毎日、日照りの中、ムチ打たれ、そのあげく・・・

いや、余計な言葉が入りました。

最後には、食用になるようなので。

ox の複数形は oxen [オクスン] ですが、複数形がこういう風になるのは、ox だけだそうです。

14-16Cに oxes という新しい形が生じたが、生き延びることはなかった。
―『英語語源辞典』

複数形の英語のルールを無視してまで、oxen を使い続けたのは、なぜでしょう?

言いやすいから?

関係ない話ですが。

雉汁(キジジル)って言いづらい。

食べたことはないけれど。

キジジル、10回連続して言ってください。

スムーズに言えた人は、キジジル連呼の名人です。

calf

calf

プロレスファンには、おなじみですね。

カーフ・ブランディング 子牛の焼印押し!!!

小さい頃は、焼印じゃなく「ヤキン」だと思っていましたけど。

というか・・・

なんで牛について書いているのでしょう?

牛なんて、興味ないのに。

ま、いいや。

そのうち、馬にまるわる英語のエトセトラを書いてみよう。

馬にも、まったく興味はないが。

コメント

from Junpei

語源の話はおもしろいですね。
しかし,一般的にNativeと牛の話が出るときは、
COWを使いますね。
それ以外の言葉なんてほとんど出ることはないので、
牛=COWとしてOKですか?先生!

英語をあまり話せない人が、今日何食べたの?みたいな話をしていて、I ate pig. と言ってNativeがフフフと笑うところを何度も見ました。
別に日本人だってポークというし、日本語として普通に定着しているのに、豚=PIGと思ってしまうところがかわいいですね。
もちろんすぐに気づいて言い直しますけどね。
ビーフをCOWと言い間違えることがないのは、
COWという言葉がPIGほど日本人に定着していない証拠かな?
確かにCOWって牝牛と言って習ったし、OXと使い分けしなければいけないのか、若い頃はちょっと悩みました。
今はCOWで通すので悩みませんけどね。
絵本なんかを読んでいるとHenとRoosterがはっきり使い分けされていることが多いのにね。


from まさんた

Junpei さん、こんにちは。

ご承知だとは思いますが、日本ではジェンダー・フリーという(和製英語の)妖怪が徘徊しています。

小学生でも、先生たちは生徒に対し、男女問わず「~さん」と呼ぶという、憂うべき状況です。

gender role をきちんと守っている牛さんたちには、せめて男女の区別をしてあげたいものです、まさんた先生としては。

そういえばニワトリも英語では名前たくさんありますね。動物の名前シリーズ、始めようかな。
すぐあきると思いますが。

from ArtSalt

>印欧祖語の gwou
本筋とは関係ないですが、ここでひらめきました。調べました。
http://www.etymonline.com/index.php?search=cow&searchmode=term

牛、ギュウ。
昔の中国語では何と発音していたのかは知りませんが、西アジアあたりでの呼び名が東アジアと欧州に伝わったのですね。

from まさんた

ArtSaltさん、こんにちは。

『英語語源辞典』の「言語学解説」にも同じようなことが書いてあります。
長いですが、引用。gwous = gwou-。


一説によると、gwous は言語の系統が不詳とされるシュメル語 gu(d) 「(種)牛」の借入で、本来は擬音語かという。また、古代中国語の「牛(上古漢音で niog)」もシュメル語からの借入とする説があるが、一般に擬音語起源の場合は、個々の言語における発生か、他言語からの借入か判断し難く、これ等の関係は臆説に止まり、なお不詳としなければならない。
※上古漢音の発音記号 n の文字は、パソコンでは表示できないので、似た文字を表示しました。

学問的には、はっきりしない限り、不詳とするしかないようです。
でも、こうも書いてあります。

誤解を避けるために繰り返すが、疑問符付きの仮説はあくまで一つの説であって、従来の研究の状況と今後の研究への資料・手掛かりとして参考にすべきものである。

なんせ、何千年前のことですからね。
だから語源は面白いのですけど。

※コメントは管理者の承認後に表示されます。

※必須 (お名前がないと、スパム判定するようになっております)
(※通常、不要です)

この記事に言及する

trackbackURL:

この記事に言及してくださる方は、下のタグにて。
タイトル文字は、ご自由に変えてください。

カテゴリー " 英語 " の最新記事

▲ページトップへ戻る