2008年4月18日
英文の基本と、複雑になる理由 ~英語の読み方(1)
世の中には日本語の本を読むように、英語で書かれた本をスラスラと読める方がたくさんおられます。
自分も英語の本を、チョロチョロと、なんとなく読んできました。
ですが、いまだに英語は思いっきり外国語。
たぶん一生かかっても、母国語なみ、にはなれそうにもありません。
それでも、なんとか洋書を読めるのは、自分の中にある英語の読み方のおかげ。(参照)拙記事-英語を読む、メガネ。
その「英語の読み方」の第一回目は、英文の基本、について。
英文が複雑になる理由
たとえば、洋書がすべて、
Siggy drove.
ジギーが運転した。
- John Irving 「Setting Free the Bears」
のように簡単に書かれていたら、読むのに苦労しません。
しかし、小説でも、評論でも、少しでも内容のあるものなら、どうしても英文は複雑になってしまいます。
英文は、右へ右へと続く
簡単な英文、
He walked slowly.
彼はゆっくりと歩いた。
これなら、すぐ理解できます。
しかし、この英文に、何か続きそうだった場合、どう予想するでしょう。
He walked slowly ・・・
どこを歩いたのだろ?
どこへ向かって?
などと予想するはずです。
He walked slowly in the late autumn breeze to the front door.
彼は晩秋のそよ風の中、正面玄関へゆっくりと歩いていった。
-John.Grisham 「The Firm」
最後まで読んでみて、晩秋のそよ風の中( in the late autumn breeze )、正面玄関へ( to the front door )とゆっくり歩いていったのがわかりました。
もちろん、予想が当たった、はずれた、が大切なのではなく、続いていく英文を、「意味のかたまり」に注意しながら読む、ということが大切。
この英文の意味のかたまりで区切ってみれば、
He walked slowly / in the late autumn breeze / to the front door.
この英文を頭から読んでみると、
He walked slowly
彼はゆっくりと歩いた
in the late autumn breeze
晩秋のそよ風の中、
to the front door.
正面玄関へ(向かって)。
この英文は、
He walked.
というS Vに、
- slowly
- in the late autumn breeze
- to the front door
という、三つの副詞が続いている英文です。
続く副詞の数はいくつであれ、これは、英文の基本の形のひとつ。

予想しながら読む、そして予想がはずれたら
To discover a system for the avoidance of war ・・・
これは、バートランド・ラッセル(Bertrand Russel)の「The Conquest Of Happiness」からの引用です。
この to 不定詞 を主語と予想するか、副詞と予想するか。
主語と予想すれば、
戦争を回避する方法を見つけ出すことは...
副詞と予想すれば、
戦争を回避する方法を見つけ出すために...
どちらが正解なのかは、
To discover a system for the avoidance of war is a vital need for our civilisation;
戦争を回避する方法を見つけ出すことは、わたしたちの文明にとって、極めて必要なことである。
is を見たとき、文頭の to 不定詞は主語、と判明します。
もちろん、大切なのは、副詞と予想していて、is を見た瞬間に読み方を切りかえることなのは、いうまでもありません。
予想しながら、右へ、右へ、と
「英文は右へ、右へと続く」ことと、「予想しながら読む」ことを意識しながら、同じく Russel の「The Conquest Of Happiness」の文章を、区切りながら、読んでみます。
To write tragedy,
さっきと同じく、この英文は to 不定詞で始まりました。
しかし、コンマ(,)があるので、副詞用法だな、と予想しながら読み続けます。
a man must feel tragedy.
(人は)悲劇とはどんなものなのか、感じとれなくてはならない。
文頭の to 不定詞( To write tragedy )が副詞用法で正しかったことがわかりました。
余談ですが、To write tragedy, の tragedy は、劇・作品としての「悲劇」ですが、a man must feel tragedy の tragedy は、「(現実の)とても悲しい出来事」としての「悲劇」です。
feel tragedy の feel も、ただ単に「感じる」では弱い気がします。
この feel は、「肌身に感じる」「経験する」に近い意味。
COD (Concise Oxford English Dictionary) で feel を調べると、二番目の定義は、
2 experience ( an emotion or sensation )
となっています。
それをふまえ、この英文を訳してみれば、
To write tragedy, a man must feel tragedy.
「悲劇」を書くためには、悲劇とはどんなものなのか、肌身で感じとらなくてはならない。
ところで、この英文の中心は、
a man must feel tragedy
で、
To write tragedy,
は、文頭に置かれた副詞(句)。
これも、英文の基本形です。

名詞を、後ろから説明する語句
To write tragedy, a man must feel tragedy.
「悲劇」を書くためには、悲劇とはどんなものなのか、肌身で感じとらなくてはならない。
に続く英文。
To feel tragedy,
これもコンマがありますから、副詞用法として読んでいきます。
To feel tragedy,
悲劇を肌身で感じとるためには、
a man must be aware
人は知っていなければならない
何を?
of the world
世界を
どんな世界?
in which he lives,
自分が住んでいる
この、
the world in which he lives
in which he lives は、文法的にいえば関係代名詞節ですが、その本質は、前の名詞 the world を、後ろから説明する語句です。
つまり、the world が、どんな the world なのかを、説明しています。
日本語では、自分が住む世界、と前から説明しますが、英語では説明する語句は、名詞の後ろに置かれます。
この、「名詞を後ろから説明する語句」も英文の基本形のひとつ。

この、名詞を後ろから説明する語句については、また詳しくとりあげます。
話を戻し、ここまでの英文を。
To feel tragedy, a man must be aware of the world in which he lives,
悲劇を肌身で感じとるためには、自分が住む世界について知っていなければならない
これだけでも、いちおう、意味ある文になります。
そして、こういう、ありふれた陳腐な言葉には、最後にインパクトを与える語句がよく付け加えられます。
not only with his mind, but with his blood and sinews.
例の、not only A but (also) B 「A だけでなく B も」。
sinew [スィニュー] は、複数形で、「筋力,腕力」という意味。
mind だけではなく、blood と sinews で、というのは難しい。
意味を理解するカギは、mind.
mind という単語は、「心」と勘違いしそうですが、よく使われるのは、「頭で考えること,知力」。
その対比としてあるのが、blood and sinews.
mind (頭で考えること)だけじゃなく、血と肉体の力でも、ということです。
つまり、
悲劇を肌身で感じとるためには、自分が住む世界について、頭でだけではなく、血と肉体でもって、知っていなければならない。
もっとはっきり言えば、
自分の住む世界を、ただ頭(知性)で知っているだけじゃダメだ。実際に自分の肉体で経験してこそ、自分の住む世界を知ることになるのだ。
not only A but (also) B は、B を強調させるための表現です。
そのうち、こういう作者のイイタイコトを表す表現についても書く予定。
話を戻し、この英文をまとめて。
ちょっと意訳しました。
To feel tragedy, a man must be aware of the world in which he lives, not only with his mind, but with his blood and sinews.
悲劇を肌身で感じとるためには、自分が住む世界について知っていなければならないが、頭で知っているだけではだめで、実際に自分の肉体で経験して知ることが大切である。
ところで、この英文には今までに書いた英文の基本がすべて含まれています。

To write tragedy, a man must be aware ・・・

the world in which he lives

a man must be aware of the world in which he lives,
not only with his mind, but with his blood and sinews
英文の基本をまとめると、

もちろん、文頭に置かれる副詞は to 不定詞 だけではなく、分詞構文だったり、when ... などの副詞節だったりします。
名詞を後ろから説明する語句も、to 不定詞の形容詞用法だったり、現在分詞(~ing)だったり、いろいろ(7種類)あります。
すべては英文の基本の応用
冒頭に載せた英文、
Siggy drove.
ジギーが運転した。
- John Irving 「Setting Free the Bears」
これは、英文の基本をすべて削り落としたもの。

本当は、削り落としたものが「英文の基本」で、

は、つけたし、つけたし、で出来たものなのですが...。
直読直解、について
実は今まで述べた「英文の基本」は、本正弘(著)『英語長文読解講義の実況中継』という参考書を読んで学んだものです。
この参考書では、英文の頭につく副詞を「文頭副詞」、名詞を後ろから説明する語句を「後置の形容詞」と呼んでいます。
大学受験用ですが、大人になって英語をやり直し始めた方にも役立つ参考書だと思います。
最後に、今回読んだバートランド・ラッセルの英文をもう一度。
To write tragedy, a man must feel tragedy. To feel tragedy, a man must be aware of the world in which he lives, not only with his mind, but with his blood and sinews.
-Bertrand Russel 「The Conquest Of Happiness」




コメント
from niko
まさんたさん、お久しぶりです! 今回の英文の基本も、大変勉強になりました。英文の基本の公式、なるほどと思いました。最近うわっつらだけしか読めていない感覚になることがあるので、とっても参考になりました。ありがとうございました☆ それから、花のブログも楽しみにしていますね!
2008年4月28日 02:07
from まさんた
niko さん、ほんと、お久しぶりです!
といっても、niko さんのブログはいつも楽しみに読んでいます。
毎回、毎回、しっかりと洋書レビューされてますね。
“去年の結婚記念日の一年前に結婚したひと” も、niko さんが紹介された洋書の記事を読むと、「読みたくなる」と言っているほど。
自分は最近、洋書はほとんど読んでないので、niko さんにならい、じっくりと読もうかな、と思っています。
花のブログ、ゴールデンウィーク中には始めようかと思っているのですが・・・
自分も、なんだかんだと、振り回されてみたり、みなかったり、でして。
2008年4月29日 09:41