意外な意味の「stand」と、意外な使い方の「breeze」

stand といえば、動詞で、「立つ」という意味が最初に思い浮かびます。

stand は名詞でも使われ、いろいろな意味がありますが、今回は「樹木」に関係する stand の話。

英和辞典で stand を調べると次のように書いてあります。

《米》(ある地域の)立ち木, はえたままの作物∥a ~ of pines マツの木立ち.
-「ジーニアス英和大辞典」

(樹木・作物の)生えている一群 [地帯]
-「カレッジライトハウス英和辞典」

なんとなくわかるような、わからないような…。

名詞の stand はどんなところ?

そこでLDOCE(ロングマン現代英英辞典)を引く。

TREE a group of trees of one type growing close together

要するにに、一種類の樹木が密集して生えているところ、か。

どれくらいの広さまでが stand なのかはわかりませんが、そんなに広い範囲ではないでしょう。

ちなみに、「森」をあらわす英単語、forest と wood の違いは、

forest (野獣の住むような人里離れた天然の大森林)
wood(s) (小動物の生息する人里近くの森)

※「カレッジライトハウス英和辞典」より。

この意味の stand が使われている英文を、ミステリーの洋書から引用してみます。その前に、英文に出てくる他の語句から。

stroll [ストゥロウル] (自動詞)ゆっくりと歩く,ぶらぶらする,散歩する。

LDOCE の定義は、

to walk somewhere in a slow relaxed way

ちなみに、amblesaunter も stroll とほぼ同じ意味です。

cattail [キャテイル] (名詞)(湿地に生える)ガマ。

こういう植物の名前は覚えるのがたいへん。実際に見ないと、なかなか覚えられません。ガマは、こういう植物だそうです。

scorch [スコ-チ] scorch というと「太陽がジリジリ」なイメージがあります。a scorching desert 「灼熱の砂漠」など。

そこから、「植物を枯らす、しおれさせる」という意味も生まれたようです。

If strong heat or wind scorching plants, it dries and damages them
-「LDOCE」

熱(heat)だけでなく、植物をしおれさすような風(wind)にも使うようです。

以上をふまえ、今回検討する英文を引用します。

She strolled along the shore. Stopped beside a stand of tall grass and cattails, which bent in the scorching breeze.
-Jeffery Deaver 「The Empty Chair」

英文の最初から。

She strolled along the shore.

彼女は川辺をぶらぶらと歩いた。

もっといい訳がありそうですが…思い浮かびません。

次の文。

Stopped beside a stand of tall grass and cattails, which bent in the scorching breeze.

主語がなく、いきなり動詞から始まります。

これは、

She strolled along the shore and stopped …

としても意味は同じですが、stopped が急に出てくることによって、より印象的な感じがします。

こういう主語なし英文は洋書や会話ではよく出てきます。

英文に戻ります。

Stopped beside a stand of tall grass and cattails

beside は、「近くに(で)」というよりも、「ほんとすぐ近くに」。

next to very close to the side of someone or something
-「LDOCE」

何の目の前で立ち止まったのか。

a stand of tall grass and cattails

stand が出てきました。

背の高い草やガマが密集して生えているところ。

もう一度、英和辞典の stand の定義。

《米》(ある地域の)立ち木, はえたままの作物∥a ~ of pines マツの木立ち.
-「ジーニアス英和大辞典」

(樹木・作物の)生えている一群 [地帯]
-「カレッジライトハウス英和辞典」

木ではないので「木立ち」はあわない。

「背の高い草やガマが密集して生えている一群・地帯」ではおかしな日本語。

a stand of tall grass and cattails

この場合、「藪」か「茂み」くらいが適当か。

a stand of tall grass and cattails

背の高い雑草やガマの茂み

の前で彼女は立ち止まりました。

そしてその「背の高い雑草やガマの茂み」は、

, which bent in the scorching breeze.

the scorching breeze によってしおれていた。

the scorching breeze はおもしろい表現。

breeze は日本語の「そよ風」とほぼ同じ。

a gentle wind
-「Consise Oxford English Dictionary」

それが scorching 「焼け付くような」。

その理由は、この小説の舞台が記録的な猛暑、という設定だから。

だから、そよ風でも scorching。

ちなみに、猛暑だ、ということを読者は知っているので、the scorching breeze と定冠詞になっています。

余談ですが、

breeze は日本語の「そよ風」とほぼ同じ

と書いたのは、日本語のそよ風には「すがすがしい」というニュアンスがあると思います。

許容範囲としては、「生暖かいそよ風」や「ひんやりするそよ風」までか。

「焼け付くようなそよ風」では日本語の感覚として少し違和感。

英語の breeze と日本語の「そよ風」は少しちがうようです。

ただし、経験上、英語でも breeze は「すがすがしい」というニュアンスで使われることのほうが圧倒的に多い気がします。

ここまでのまとめ。

She strolled along the shore.

彼女は川辺をぶらぶらと歩いた。

そして?

Stopped beside a stand of tall grass and cattails

(彼女は)立ち止まった。背の高い雑草やガマの茂みの目の前で。

その茂みは、

, which bent in the scorching breeze.

ゆっくりとした風に運ばれてくる猛烈な暑さによって、頭(こうべ)を垂れていた。

ここのところの訳は苦戦しました…。

英文と試訳を。

She strolled along the shore. Stopped beside a stand of tall grass and cattails, which bent in the scorching breeze.

彼女は川辺をぶらぶらと歩いた。そして、背の高い雑草やガマの茂みの前で足を止めた。ゆっくりとした風に運ばれる猛烈な暑さのせいで草々はみなぐったりとしている。

意外な意味の(といってもたまに見かけますが) stand や、the scorching breeze という面白い表現を考えてみました。

たった二行の、何気ない英文といえば何気ない英文ですが、情景が目に浮かぶ英文だな、と思って取り上げてみました。

これからは、何気ない表現に、もっと注意をはらいながら、洋書を読んでみようと思っています。

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