2007年7月 5日
現代英文法講義 安藤貞雄(著)
現在、たくさんの英文法書が出版されています。
その中で、この文法書は最高峰のひとつ(微妙な表現ですが...)ではないでしょうか。
はしがきに、こう書いてあります。
本書は,半世紀にわたる著者の英文法研究を集大成し,長い年月をかけ,渾身の力をふりしぼって書きあげたライフワークである.
どのページを開いても、著者のおっしゃる通り、渾身の出来です。
英文法の成り立ちから考える
この本で学んだことはいっぱいありすぎて、全部は書き切れないので、現在完了形をとりあげてみます。
(1)のような現在完了形は,OE では(2)のような語順であった.
(1)I have caught the fish. (私は魚を捕らえた)
(2)I have the fish caught.
-安藤貞雄(著)「現代英文法講義」130p
※OE(= Old English)西暦700年から1100年くらいの間。
caught は過去分詞の形容詞。
ヨーロッパの言語では形容詞が後ろに置かれるのは普通です。
現代英語でも、修飾語が長いと後ろに形容詞(過去分詞・現在分詞)は名詞の後ろに置かれます。
どうして(2)の形から(1)へと変化したのでしょうか。
(1)I have caught the fish. (私は魚を捕らえた)
(2)I have the fish caught.
このように説明されています。
さて,「魚を捕らえた状態でもっている」ということは,それ以前に捕らえたという行為が完了したことを含意するので,have ... caught が徐々に動詞的意味を獲得するとともに,過去分詞を have の後ろに置く語順が14世紀には一般化し,その結果, 'have + en' が完了相を表す文法形式となった.
-安藤貞雄(著)「現代英文法講義」130p
このように文法の成り立ちが書いてある英文法書は現在ではまれです。
なぜ完了形に have を使うのか、納得できると思います。
そのあと、現在完了形の説明が理解不能なくらい詳しく説明され、とどめとして、「注意するべき現在完了形」が載っています。
次の英文がなぜおかしいか。
Einstein has visited Prinston.
-安藤貞雄(著)「現代英文法講義」145p
この英文はChomsky (チョムスキー)の本からの引用のようです。
なぜおかしいか?
現在完了の主語は現存していなければならない、から。
たしかにアインシュタインはもう故人。
言われてみれば、あたりまえのことですが、こういうことが書いてある文法書は他に知りません。
さらに続いて、
EINSTEIN has visited Prinston.
と強調すると OK になる、などが説明されており、読み始めると止まらなくなります。
ちなみに、
Newton has explained the movement of the moon.
(ニュートンは月の運行を説明している)
-安藤貞雄(著)「現代英文法講義」145p
は、文法的に、OK。
それは,彼の著書が現存しており,かつ,その説明が現在でも妥当であるという前提が話し手の側にあるからである.
-安藤貞雄(著)「現代英文法講義」145p
その後、「これに対して...」と続く。
ほんと、切りがないほどの説明。
そりゃあ、
渾身の力をふりしぼって書きあげた
わけだ。
英文の出典が載っています
普通の英文法書では引用した英文の出典は書かれていません。
でもこの「現代英文法講義」には、全部ではありませんが、英文の出典が書かれています。
そこがまた気に入りました。
歴史的に考えるところや、英文は原書からの引用、などは細江逸記(著)「英文法汎論」に近い感じ。
もちろん、「現代英文法講義」のほうが断然読みやすいですが。
出典がない英文、
The man who eats glass is my cousin.
(ガラスを食べるその男は,私のいとこです)
-安藤貞雄(著)「現代英文法講義」182p
なんか、とっても気になる...
必要とあれば、ググります
この本は伝統文法ガチガチではありません。
Thet's all you have to do is fight. のような破格構文に対し、
しかし,このような破格構文(anacoluthon)といえども,それが英語の事実であるならば,記述・説明されなければならない,というのが著者の立場である.
-「はしがき」より
それを説明するのに、
Thet's all you have to do is の例は,特に多い(Google で 180例以上).
-安藤貞雄(著)「現代英文法講義」28p
著者の安藤さんは喜寿をお超えになり、80歳になられますが、Google まで道具にしておられます。
「現代英文法講義」は、難しく、読むのが大変なところがありますが、読んでいて気がつくと洋書そっちのけで熱中してしまうのは、著者の熱意に引き込まれてしまうから、なのかもしれません。
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