Breakheart Hill

by Thomas H. Cook

「ホームズ」などの古典は別として、現代ミステリーはだいたい、一回読むと、再読することはまずありません。

でも今回紹介する Thomas H. Cook の 「Breakheart Hill」。
なんだかまた読み直してみたくなり、再読後、やっぱり切ない気持ちになりました。

切なすぎるミステリー

舞台は1960 年代の南部アメリカ。
その Choctaw という田舎町の高校に Kelli Troy (ケリー・トロイ)が転校してくる。

Kelli のような女性をどう表現すればいいのか。

性別も、タイプも全く違いますが、あえていえば・・・西郷隆盛?

慕うにせよ、嫌うにせよ、出会った人の人生を大きく変えてしまう。

魅力をつらつらと文章にしても意味がない、そういう魅力。

一方、主人公 & 語り手は Ben Wade (ベン・ウェイド)。

I felt ugly and unworthy and inconceivably repulsive, a grotesque little frog that no kiss could ever transform into a prince.

【訳】
自分の醜さ。自分という人間の無意味さ。自分でも、吐き気が出る。お姫様にキスをされても決して王子様にはなれない醜い蛙。

繊細で知性があり、理想は持ちつつも、その理想を実現できないのは自分でもよくわかっている。

わかっているからこそ、思い悩む。

思い悩むがゆえ、さらに思い悩む。

主人公の設定としてはありがちですが、Ben への共感、そして Kelli のなんともいえない魅力。

作者の狙い通り、読んでいて話に引き込まれました。

事件後と30年前のタイムトリップ。

事件から三十年後、Ben は Choctaw で医者になり、尊敬を得る。

その意味では夢は叶ったが、30年前に起こった恐ろしい事件に今でもとりつかれている。

話の序盤から、事件の全貌は明らかにされる。
しかし、事件の真相は不明のまま、進行する。

真相が判明するまで、話の舞台は高校時代、そして Ben が成熟した30年後の世界を行ったり来たり。

心が凍りつきました。

題名の 「Breakheart Hill」とは、Choctaw にある小高い丘の名前。

Kelli がその由来を調べ、Ben に語りますが、それも実に切ない話。

切ない話が積もり積もって、ある場面で、突然、全てが氷解します。

そうだったのか・・・

あるいは、話の途中で'ソノコト'に気づく読者もいるかもしれません。

自分もウスウスですが、感じていました。

でも・・・

天国のはじっこ(the ledge of heaven)に踏みとどまれるか、それとも、楽園から落っこちる(tumble out of paradise)か。

本当に、切なく、悲しく、恐ろしい小説。

今のところ、自分の中では、このミスNo.1。

翻訳本:夏草の記憶
訳:芹沢恵

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以上、「Breakheart Hill」を読んだ感想でした。

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