2007年5月13日
母の日の英語
誰にでも思い出の本があると思います。
自分の場合、洋書ではモーム(W.Somerset Maugham)の長編、「Of Human Bondage (人間の絆)」。
最初に読んだ洋書です。
正確に言うと、(挫折せず)最初に読み切った洋書。
600ページ超。しかも普通のペーパーバックより小さな文字でびっしり。
モームの英文はとても簡潔で、読みやすいのもありますが、こんな長い洋書を読み終えることができたのは、今思うと、自分でも少しびっくり。
思い出の「Of Human Bondage」については、そのうち書きたいと思います、じっくり。
今回はモームの回顧録、「The Summing Up (要約すると)」のこと。
Of Human Bondage に描かれる母。
モームは小さいとき、両親を亡くしました。
「Of Human Bondage」はモームの自伝的小説で、冒頭で母との死別が描かれています。
主人公 Philip の母は自分の死を覚悟しています。
最後にと、幼い Philip を自分のベッドに連れてきてもらう。
母の腕に抱かれ、幸せそうに眠る Philip。
Knowing she would not be allowed to keep the child much longer, the woman kissed him again ; and she passed her hand down his body till she came to his feet ; she held the right foot in her hand and felt the five small toes ; and then slowly passed her hand over the left one. She gave a sob.
【訳】
これ以上わが子をそばに置いておくのは許されないと知ると、母はもう一度この子にキスをした。そして、息子の体を片手で追い、両足にたどりついた。まずは右足を手で包み、五本の小さな指を撫でる。そして、ゆっくりと手を左足にもっていったとき、母は突然すすり泣いた。
Philip は左足が不自由。
自分がこの世を去ったあと、小さな息子はどうなるのだろう、と心配する母親の気持ちがすごく伝わります。
もちろん、自伝的小説とはいっても、あくまで小説。
でもモームの理想の母親像が描かれていると思います。
The Summing Up 母への愛。
モーム自身の、小さい時に失った母への愛は「The Summing Up」で読み取れます。
My parents died when I was so young, my mother when I was eight, my father when I was ten, that I know little of them from hearsay.
¶hearsay(名詞)うわさ,見聞。
【訳】
私は幼いときに両親と死別した。母とは八歳、父とは十歳のときに。だから両親のことは人づてに聞いただけでほとんど知らない。
モームの母はとても美しかったようです。
My mother was very small, with large brown eyes and hair of a rich reddish gold, exquisite features and a lovely skin. She was very much admired.
【訳】
母はとても小柄な人だった。大きな褐色の目、赤みを帯びた金髪はふっさりとしており、優雅な顔立ち。肌も美しく、人々の賛嘆の的であった。
一方、父はそんな美しい母とは正反対。
He was forty when he married my mother, who was more than twenty years younger. She was a very beautiful woman and he was a very ugly man. I have been told that they were known in the Paris of that day as Beauty and the Beast.
【訳】
父が母と結婚したのは四十歳の時で、母は二十歳以上も年下であった。母はとても美しく、父は非常に醜かった。その頃のパリでは、二人を「美女と野獣」と呼んでいた、と聞いたことがある。
後年、生前の母と親しかったアメリカに住む女性から、こんな話を聞いたという。
その婦人はモームの母に質問した。
"You are so beautiful and there are so many people in love with you, Why are you faithful to that ugly little man you've married?"
【訳】
「あなたはとても美しく、あなたをお慕いしていらっしゃる方がたくさんおられるというのに、どうしてあんな醜い小男の夫に尽くしておられるのですか?」
率直すぎ。
それはともかく、モームの母はこう答えたという。
"He never hurts my feelings."
夫は私の感情を傷つけるようなことは絶対なさりません。
涙。
美しく、そして聡明な女性であったのでしょう。
そんな、あまりにも早くこの世を去った母への皮肉屋モームの愛。
二度目の涙。
ちなみに、今日は母の日です。
毎年、我が家では母の日だからといって、特別なことはありません。
誰のせいでもないんでしょうけどね。きっと。
そんなわけで、母の日にちなむ英語はないかと考えてたら、モームの母の言葉を思い出しました。
"He never hurts my feelings."
三度目の涙。ワニの涙。
以上、母の日の英語、でした。

comments
from nobuko@ケイティクス
こんにちは。初めて(挫折せず)読まれた本が 600ページって聞いて驚きです。しかも文字が普通サイズより小さいんですよね。多分ハリーポッターより分厚いですよ。もし私なら無理ですね~、ぜったい。途中で気持ちいい睡魔に襲われてしまいます(T_T)
2007年5月14日 22:48
from まさんた
nobuko さん、こんにちは。
読み通せたのは、それまでの挫折の積み重ねの結果でしょう。
タイガーマスクになる、という人生の挫折を含めて。
まあ、長い洋書を読み終えたのは少し自信になりました。
ほんの、ちょっと。
2007年5月15日 23:47