2007年3月 7日
as if と仮定法のこと
Michael Connelly の「The Black Ice」を読んでいたら次の英文がありました。
なかなか素敵な英文です。
picture は、写真。
She was beautiful in the picture and her husband was looking at her as if he knew it.
-Michael Connelly 「The Black Ice」
he knew it の it は she was beautiful。
むかし、as if S+過去形を仮定法過去、「まるで~であるかのように」と教わりました。
仮定法ですから、「本当は違うけれど」ということ。
この英文に使われている as if が仮定法だとすると、
写真のなかの彼女は美しかった。夫も、(本当はそんなこと思っていないが)本当に美しいと思っているふりをして彼女を見つめていた。
という意味になってしまいます。
本当の意味は、それとは逆。
写真のなかの彼女は美しかった。夫も、ほんとに綺麗だなぁ、という顔で彼女を見つめていた。
旺文社「表現のための実践ロイヤル英文法」に、
非現実のことを仮定してではなく、ただ「…のようだ」という意味で、ある様子を述べる場合には直説法をつかう。
-「表現のための実践ロイヤル英文法」
と書いてあります。
「The Black Ice」はすべて過去形で語られる小説。
よって、
She was beautiful in the picture and her husband was looking at her as if he knew it.
と主人公のハリー・ボッシュが思った時点に時制を戻すと、
She is beautiful in the pictuere and her husband is looking at her as if he knows it.
となるはず。
もとの英文が he knew と過去形なのは単なる時制の一致。
これなら仮定法ではありません。
直説法です(この用語も実にわかりにくい英文法用語ですが)。
もし、
She is beautiful in the pictuere and her husband is looking at her as if he knew it.
と、そのときボッシュが思ったならば、本当の仮定法で、
写真のなかの彼女は美しかった。夫も、(本当はそんなこと思っていないが)本当に美しいと思っているふりをして彼女を見つめていた。
という意味。
仮定法のあいまいさ、のこと。
仮定法が使われている英文はたくさん集めました。
そのうち仮定法の話を書きたいと思いますが、とりあえず、今回は仮定法のあいまいさ、について。
たとえば、
If he were HIV positive that might help them ID him through doctors or clinics.
【語句】
¶HIV positive (名詞)HIV陽性の人,HIVキャリア。
¶ID (動詞)身元を突き止める。【訳】
もしこの男がHIVキャリアだったら、病院や診療所を通して身元を突き止められるかもしれない。
-Jeffery Deaver 「The Coffin Dancer」
英文を補足すると、この段階では男が HIVキャリアかどうか、わかっていません。
でも文法的には、If he were ですから、あきらかに仮定法。
しかし、この段階では HIVキャリアかどうかは判明していませんから、「実際はそうではないが、そうだと仮定すると」だと意味が変。
仮定法の、2つの意味。
仮定法には2つの意味があります。
1.実際は違うが、仮定の話。
2.可能性が低い、または、不確かなこと。
If he were HIV positive … は、2の「可能性は低いが、(または)不確かだが~」。
ですから、それを意識して訳せば、
If he were HIV positive that might help them ID him through doctors or clinics.
【訳】
調べてみないとわからないが、もしこの男がHIVキャリアだったら、病院や診療所を通して身元を突き止められるかもしれない。
ついでに、1.本当の仮定、の英文をひとつ。
If I had a grandmother worth twenty million dollars I'd send flowers once a week, card every other day, chocolates whenever it rained and champage whenever it didn't.
【語句】
¶I'd = I would【訳】
もし僕に2千万ドルの財産があるおばあちゃんがいたとしたら、花束は毎週、一日おきにカードを、雨の日にはチョコ、晴れの日にはシャンペンを送り届けるだろう。
-Jhon Grisham 「Rainmaker」
すごく気持ちのわかる英文です。
再び、as if
as if の話に戻ります。
今度は、「実際は違うが、仮定の話」の as if の英文。
She drilled a hole in him with her tiny fierce eyes, as if she had caught him in her purse.
【語句】
¶fierce/フィアス(形容詞)(顔つきが)険しい。【訳】
ちっちゃいが鋭い目で彼女は彼を射抜いた。まるで彼が財布に手を突っ込んでいるところを見つけたかのように。
-Jhon Grisham 「The Firm」
drill a hole in ~ という表現がスゴイ。
プロレス技に、「ドリルアホール・パイルドライバー」というのがあります。
パイルドライバー(pile driver)は、「杭(くい)打ち」。
ちなみに、キン肉マンにはキン肉ドライバーという技があり・・・(略)
文法にとらわれすぎないことも、時には大切。
本当なら仮定法過去(つまり動詞の過去形)を使わなければならないのに、直説法(つまり現在形)を使っている英文がありました。
”We must continue to live as if we suspect nothing.”
【訳】
「何も疑ってないふりして暮らし続けなくちゃならないよ」
-Jhon Grisham 「The Firm」
FBI、マフィアに追われる生活を送っているときに言う台詞。
当然、バリバリ疑っています。
だから、仮定法を使い、「まるで疑っていないかのように」なら、
as if we suspected nothing
となるはず。
あるいは、現在形でも言っている意味は明瞭だから、わざわざ仮定法にしなかったのかもしれません。
ネイティブが使っているのだから。
自分は学校文法の信望者 (& その弊害をもろ受けている人間)。
実際の英文を読んでいると、学校文法では「非文」とされる英文がたくさん出てきます。
特に、関係代名詞の「制限用法」・「非制限用法(継続用法)」の区別がおかしい英文はよく出てきます。
最初は???と思って悩んだこともありましたが、最近はサラッと無視。
それが英語伸び悩みの原因か?
とにかく、日本人から見て文法的にはおかしくても、ネイティブが書いたものなのだから、意味がわかるなら、そういう言い方もある、で済ますのも一つの方法。
自分だって、おかしな日本語をいっぱい使っていると思いますから。

comments