「英会話どうする?」里中哲彦(著)

現代書館:里中哲彦(著)

中学で三年、高校でも三年、大学で四年。

学校で十年も英語を勉強しているのに日本人は英語がしゃべれない、聞き取れない、書けない、読めない。つまり、日本の英語教育は全く成果が上がっていない。

日本の英語教育に対する批判の常套句ですが、里中さんは明快な反論をしています。

10年間の内訳は、だいたい次のようになります。

中学の授業で週に三時間×三五週×三年間 = 約三00時間

高校の授業で週に四時間×三五週×三年間 = 約四00時間

大学の授業で週に二時間×三五週×四年間 = 約三00時間

これらを合計してみると、一000時間にしかなりません。
-「英会話どうする?」

一日あたりどれくらい勉強しているのか計算してみると、

驚くなかれ、一年で一00時間、一日にするとわずか一七分ほどになってしまいます。(略)一日にたった一七分程度で英語が話せるようになるというのでしょうか。
-「英会話どうする?」

実際には家で予習・復習したり、塾に通っていたりすれば、平均時間はもっと伸びると思いますが、それでも平均で一日に一時間以上、大学卒業までに英語を勉強してきた人はまれでしょう。

TOEIC の成績が日本人は世界で最低ランクなことについても、里中さんは明確な反証をしておられます。

かいつまんで言うと、高スコアをあげている国々の TOEIC 受験者数は、数十人から数百人。

一方、日本人の TOEIC 受験者数は十万人ちかく。

エリート、というと御幣がありますが、英語に自信がある数百人が受験する国々と、まだ英語は得意ではないが、「日ごろの勉強の成果を知りたい」から受験する人が多い」日本人では平均スコアが違うのは当たり前かもしれません。

敵を知り、己を知らば、百戦危うからず

「英会話どうする?」は三章からなります。

第一章 日本人と英語
第二章 英会話以前
第三章 アメリカ

孫子の兵法に、

敵を知り、己を知らば、百戦危うからず

という言葉があります。

相手を知り、自分の劣っているところがわかっていれば、百回戦っても、まずは勝てる。

危うからず

というのがミソで、絶対に勝てる、という保証はない。

いかにも孫子らしい含蓄のある言葉ですが、まあそれはおいときます。

里中哲彦さんは「孫子の兵法」とは書いていませんが、自分が勝手に「英会話どうする?」を、

(英語学習者のための)里中の兵法

と呼んでいます。

相手を知るための、英米文化の基礎となっている聖書やマザーグース、シェークスピアの話。

己を知るための、「和製英語にご注意」、「日本人が知らない単語の使い方」、など。

たとえば、

ゴミをくず箱へ放り投げて少し外れたとき、「惜しい!」などというが、英語ではそうしたとき、Almost ! と声を上げる。almost はつねに"未達成"なのである。Close ! ということもある。
-「英会話どうする?」

へぇー

ちなみに自分は投げた物がゴミ箱に入らなかったら、入るまでやり直します。さすがの黄金の右腕でもコントロールミスすることがあり、五・六回も投げなおすこと多々あり。

アメリカ人でも入るまでやる、自分と同じような「しつこい男」はいるのでしょうか?

しつこい男の撃退法。

しつこい男に誘われたら?
その撃退法を里中さんは五ページちょい使って説明しています。

まずは男同士の女の子の品定め。

How is she on a scale from one to ten ? (あの子、10点満点で何点?)
-「英会話どうする?」

そして、どうしたらそういう男たちを撃退できるかの研究?が続く。

しめくくりは里中さんの言葉。

しつこくいろいろ書いてきましたが、私自身はまったくしつこくない男です。ほんとです。
-「英会話どうする?」

アメリカ社会を知る。

アメリカ人についての話。
題名だけ書けば、

ユーモアのセンスは知性の証

アメリカ人の宗教心を軽視してはいけない

アメリカ人を怒らせる言葉

日本人はこんなふうに思われている

どれもエッセイとして面白く読めます。

アメリカ論、のような本はたくさんあります。

でも、だいたい、「アメリカ人はこうだ!」と、決めつける態度で書かれたものが多いですが、里中さんの場合、相手を非難せず、自虐的にもならず、ユーモアがあります。

やっぱり、なにごともユーモアが大切。

英会話を本気で学ぼうとする人にはぜひ読んでもらいたい一冊です。

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