2006年12月15日
英文を読めること、説明できること、の違い
洋書をスラスラと読みこなせるようには、第一に洋書をたくさん読むことですが、読んでいて文法的にわからないところが出てくることもよくあります。
どう解釈すればいいのだろう?
と頭をひねることも読解力をつけることには大切なことだと思いますが、いくら考えてもわからないこともあります。
その原因は読解力不足。
で、自分は読解力を鍛えるために英文読解用の受験参考書をよく読みます。
受験参考書とはいえ、何回も読み返していると、今まで気づかなかったことに気づくことも多い。
英文読解用の参考書としては、
伊藤和夫「長文読解教室」「テーマ別英文読解教室」
原仙作「英文標準問題精講」
朱牟田夏雄「英文をいかに読むか」
佐々木高政「英文解釈考」
などを読んでいます。
最後三つの参考書は明らかに今の受験レベルを超えています。自分も読んでいて悩むこと多々あり。
佐々木高政「英文解釈考」を読み終えたので、今度は伊藤和夫「テーマ別英文読解教室」を読み返そうと思い、読み始めたらさっそく気になるところがありました。
vocabulary と、語彙。
この参考書の最初の英文で、単語の意味の変遷を扱った英文。
最初の三つの文を引用します。
単語の意味と訳は「テーマ別英文読解教室」のものです。
(1)The gradual change of signification in words is a universal feature of human language;and it is not difficult to see why it is so. (2)Even the richest vocabulary must, in the nature of things, be inadequate to represent the inexhausible variety of possible distinctions in thought. (3)We can meet the continually occurring necessities only by using words in temporary deviations from their ordinary senses.
¶signification 意味。¶feature 特色。¶inadequate 不適当な,不十分な。¶inexhaustible 尽きることのない。¶distinction 区別。¶temporary 一時的な。¶deviation (規準などから)はずれること。
単語の意味が徐々に変わってゆくのは、人間の言語のすべてに見られる特徴であり、なぜそうなるのか知るのは難しいことではない。ものを考えてゆく中で生じうる区別には無限と言ってよいほどの変化があるが、最も豊富な語彙をもってしても、これを示すには当然不足が生じる。たえず生じてくる必要を満たすためには、どうしても単語をその通常の意味から一時的にずらして使わなければならない。
-「テーマ別英文読解教室」
最初の英文、
The gradual change of signification in words is a universal feature of human language;and it is not difficult to see why it is so.
¶signification 意味。¶feature 特色。
単語の意味が徐々に変わってゆくのは、人間の言語のすべてに見られる特徴であり、なぜそうなるのか知るのは難しいことではない。
は、それほど難しくはないでしょう。
why it is so は本書の解説に、
why it is so = why the gradual change of ... is a universal feature of ...「なぜそうなのかを知るのは、難しいことではない」。
と、あります。
で、問題の二番目の英文。
Even the richest vocabulary must, in the nature of things, be inadequate to represent the inexhausible variety of possible distinctions in thought.
¶in the nature of things 物の道理から考えて,必然的に。¶inadequate 不適当な,不十分な。¶inexhaustible 尽きることのない。¶distinction 区別。
ものを考えてゆく中で生じうる区別には無限と言ってよいほどの変化があるが、最も豊富な語彙をもってしても、これを示すには当然不足が生じる。
よくよく読んでみると、訳文がいまいちスッキリとしません。
ともあれ、最初からみてみると、
Even the richest vocabulary
この訳は、
最も豊富な語彙
となっていますが、よく考えてみると意味が明瞭ではありません。
vocabulary の訳が単に語彙では弱い気がします。
vocabulary を LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English/ロングマン現代英英辞典)で調べると、
1 all the words that someone knows or uses
2 all the words in a particular language
ー「ロングマン現代英英辞典」
となっています。
1の意味は意訳すれば「各人の語彙力」
2は、「ある言語の全ての語彙」。
やはり単に「語彙」とは違います。
さらに「ジーニアス英和辞典」を見てみると、
語彙(ごい)《ある職業・専門分野・個人などの用いる語の全体;単語1つ(a word)やばらばらの単語の集団(words)ではない》
と注意書きがありました。
ですから、the richest vocabulary とは、ロングマン現代英英辞典とジーニアス英和辞典の定義から考えると、
1.(ある人が持っている)豊富な語彙数、言い換えれば、語彙の豊富な人。
2.語彙の豊富な(とある)言語。
のどちらかではないでしょうか?
後段に「どんなに鈍く平凡な人でも・・・」、「機知と想像力に恵まれた人なら・・・」とあるので一番目のような気もしますが、はっきりとはしないので、とりあえず、
いかに語彙が豊富であっても
としておきます。
dictinction と、区別。
で、続き。
Even the richest vocabulary must, in the nature of things, be inadequate to represent ・・・
いかに語彙が豊富であっても、当然のことながら、・・・を表すには不十分である。
何を示すには不十分かというと、
the inexhausible variety of possible distinctions in thought
¶inexhaustible 尽きることのない。¶distinction 区別。
ものを考えてゆく中で生じうる区別には無限と言ってよいほどの変化
訳文の、
ものを考えてゆく中で生じうる区別
の意味が不明でした。
distinction を直訳すると「区別」ですが、何の区別?。
distinction を考える前に the inexhausible variety of ・・・ですが、variety of は形容詞のように働きます。
(参考)
A nurse has a wide variety of duties.
看護婦はさまざまな仕事をこなさねばならない.
-「カレッジライトハウス英和辞典」
the inexhausible variety of ・・・は「尽きることない・・・」。
尽きることないのは、possible distinctions in thought。
in thought は「考えていると,思考をめぐらしていると」。
possible は、「(考えつく)可能性のある」。
(参考)
a possible danger
起こりうる危険
-「カレッジライトハウス英和辞典」a possible enemy
敵になりそうな人
-「カレッジクラウン英和辞典」
まとめて、the inexhausible variety of possible distinctions in thought は、
いろいろと思考を巡らしていると、尽きることなく考えつく可能性のあるdistinction
問題の distionction をLDOCEで調べると、
difference [C,U] a clear difference or separation between two similar things
ー「ロングマン現代英英辞典」
要するに、
似たもの2つの、明白な相違点。
また、
その違いをはっきりと区別すること。
ですから、
Even the richest vocabulary must, in the nature of things, be inadequate to represent the inexhausible variety of possible distinctions in thought.
のイイタイコトは、
思考を巡らしていると、いろいろと尽きることなく頭に浮かんでくる。
考えついたことはそれぞれ似てはいるが、違いはある。
しかし、いかに語彙が豊富といっても、それぞれをピタリと表現するには不十分である。
訳せば、
言うまでもないことだが、思考をめぐらしているうちに尽きることなく浮かんでくる一つ一つを明確に表現するには、いかに語彙が豊富といっても不十分である。
くらいになるでしょうか?
それをふまえ、次の英文。
We can meet the continually occurring necessities only by using words in temporary deviations from their ordinary senses.
¶temporary 一時的な。¶deviation (規準などから)はずれること。
たえず生じてくる必要を満たすためには、どうしても単語をその通常の意味から一時的にずらして使わなければならない。
the continually occurring necessities 「たえず生じてくる必要」というのは、考えついたことをピタリと表現できる言葉がないとき、どうにかしてそれを言い表す必要。
どうやって言い表すかというと、
only by using words in temporary deviations from their ordinary senses
単語の通常の意味から一時的にずらして使う(ことによってのみ)
このあとも英文は続きますが、省略。
この英文の論としては、ピタリと表す言葉が見つからないとき、その代用としてすでに存在する言葉を使うことになるが、そうしていくうちに本来の意味からずれていき、派生した意味が取って代わることがある、ということです。
英文を理解すること、訳すこと、説明すること。
vocabulary や distinction のような見慣れた単語ほど、よく考えて見ないとあやふやな理解になってしまう、と実感した英文でした。
よく、「英文を理解することと、日本語に訳することは別だ。訳せなくても英文をちゃんと理解することができる」ということを聞きます。
ですが、自分の経験上、上手に訳せるとかではなく、英文が何を言おうとしているのか、日本語でちゃんと説明できない場合、英文自体をきちんと理解できていないことが多いと思います。

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