2006年11月28日
狂犬病(rabies)、のこと
ミステリーの洋書によく出る英単語や文法の例文を集めたプチ・コーパスを Word で作っていましたが、やはりデータベースは Exel の方が向いているので、いまデータを Exel に移しています。
が、英単語の数が三千以上あり、引用文はその何倍もあるので移すのに手間取ってなかなか洋書を読めません・・・
狂犬病。
ところで、報道によると日本で36年ぶりに狂犬病患者が出た、とのことです。
狂犬病は英語で rabies。
rabies [ レイビーズ ]
【名詞】狂犬病,恐水症(恐水病)。
で、プチ・コーバス編集中にたまたま狂犬病(rabies)が使われている文を見つけました。
ちなみに引用文中の a bitten child というのは、家族の中の、アタマがおかしくなった人間に噛まれた子供、のことです。
"Parents of a bitten child will claim an animal did it and let the child take rabies shots to cover for a snapper in the famlily ― you've all seen that."
¶claim/クレイム(動詞)言い張る。¶shot/ショト(名詞)注射。¶cover for ... (熟語)...をかばう。¶snapper/スナパ(名詞)(俗語)変わり者。
【訳】「子供が噛まれたとなると、親たちは動物の仕業だと言い張り、子供に狂犬病の注射を打たせたりするものです。家族に変わった人間がいるのを隠すために―それは皆さんもご承知でしょう」
-T.Harris「Red Dragon」
アメリカは狂犬病がまだ根絶されていない国なので、狂犬病のワクチンを打たせることはよくあることなのでしょう。
英文を、少し補足。
Parents of a bitten child will claim an animal did it
【訳】子供が噛まれたとなると、親たちは動物の仕業だと言い張る
助動詞 will は未来ではなく、「習性(~しがち,するものだ)」の意味。
(参照)
People will talk.
(人はうわさをするものだ)
-「表現のための実践ロイヤル英文法」She will fall in love with the wrong people.
(彼女は、えてしてまちがった人と恋におちいる)
-「現代英文法講義」
動詞 claim(言い張る)のあとには that が省略されています。
(cf.)claim that an animal did it
an animal did it の did it(それをした) は、子供を噛んだこと。
書き換えれば、
Parents of a bitten child will claim that an animal bit the child
続き。
and let the child take rabies shots
【訳】子供に狂犬病の注射を打たせる
let は第五文型。意味は使役「~に...させる」。
(参考)
The teacher let the pupils go home.
先生はその生徒たちを家へ帰らせた。
-「カレッジライトハウス英和辞典」
最後の文。
「子供が噛まれたとなると、親たちは動物の仕業だと言い張り、子供に狂犬病の注射を打たせたりするものです」とウソをつく理由。
to cover for a snapper in the famlily ― you've all seen that.
【訳】家族に変わった人間がいるのを隠すために―それは皆さんもご承知でしょう
熟語 cover for をLongman (Longman Dictionary of Contemporary English/ロングマン現代英英辞典)で調べると、
to prevent someone from getting into trouble by lying for them, especially about where they are or what they are doing
ある人が困難に陥るのを避けるために、その人をかばい嘘をつく。特に、その人が今どこにいるのか、何をしているのかなどについて嘘をつく。
ー「ロングマン現代英英辞典」
どんな人間をかばうのかというと、snapper(変わり者)。
snapper という俗語はあまり見かけません。大辞典には載っていますが、大抵の英和中辞典には載っていませんでした。
狂犬病(rabies)の語源。
日本語では狂犬病と「犬」の文字が付きますが、英語では犬のイの字もありません。
そこで語源辞典で調べてみると、語源はラテン語の rabies/ラビエース。
つづりは英語と全く同じ。
というか英語 rabies(狂犬病)はラテン語からの借りものです。
医学用語はラテン語からの借用語が多いですが、狂犬病もそう。
羅英辞典(Cassell's Latin Dictionary)で rabies を見ると、意味は、
maddness(狂気), rage(怒り)
狂犬病にかかった犬の怒り狂った様子を見て、その病気をラテン語の「狂気,怒り」という意味の単語を使って病名にしたのでしょう。
ちなみに、英語 rage(怒り)の語源も同じくラテン語の rabies。
rabies(狂犬病)と rage(怒り)のつづりが少し違うのは、rage(怒り)の方は古仏語を経由して英語に入ってきたからです。
つづりが似ていると語源が同じことが多いです。
狂犬病にかかった犬は、怒り狂っています。
rabies という英単語を「狂犬病」と覚えるのは大変ですが、rage(怒り)と語源が同じ、というのを知ると、覚えやすくなると思います。
英単語の語源を知ると、記憶の助けになります。
なぜに恐水症?
狂犬病は恐水症ともいいます。
狂犬病にかかると水を恐がる症状が出るのがその理由らしいです。
英語でも狂犬病を rabies 以外にも hydrophobia(ハイドゥロフォウビア)と言います。
hydrophobia の語源について語ると長くなるので簡単に言うと、
hydro = 水
(参照)hydrogen/ハイドゥロヂェン(名詞)水素。
phobia = 恐怖
(参照)acrophobia/アクロフォウビア(名詞)高所恐怖症。
以下、テレビ、新聞、週刊誌などで知った狂犬病(恐水症)についての情報のまとめです。
狂犬病(恐水症)の原因はウイルスで、ウイルスは唾液にも含まれる。
で、のどの渇きは感じるが、水を飲もうとするとノドが麻痺を起こし、今度は水を恐がる。
恐くて水を飲めないので狂犬病にかかった生体は死んでしまう。
生体が死んでしまうと体内のウイルスも死滅してしまうので、他の生体に増殖しようとして、唾液から感染させるため何にでも噛みつこうとするそうです。
こういうわけで恐水症とも呼ぶそうです。
ミステリーで rabies(狂犬病)という単語が出ることはめったにありませんが、たまには時事ネタを書いてみました。


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