「英文解釈教室」伊藤和夫(著)

伊藤和夫(著)

薬袋善郎著『TIME を読むための10のステップ』にこうあります。

最高峰の参考書として『英文解釈教室 改訂版』(研究社出版、伊藤和夫著)があります。この本は英語の考えられるしくみを網羅した参考書なのですが、例文が難解なことと分量が多いこと、そのわりに解説があっさりしすぎていて、かなりの力がないとつらいと思います。ただし、読めれば『タイム』の英文であろうと構造がまるでわからないなんてことはなくなるでしょう。

『英文解釈教室』は時代遅れの英語教育の代表と言われている参考書です。
「難しすぎる」 「受験生には必要ない」など。
確かに難しい。

伊藤和夫自身がこう言っています。

「英文解釈教室」を書いた時は、もちろんできるだけ明快に書いたつもりだったからね。難しい、難しいとあちこちで言われるたびに、意外と言うか、時には心外な感じがしたものだ。ただ、今になって見ると、あの本を書いていた時は、こういう角度から見れば英語構文の全体を統一的に示せるということにアタマが向きすぎていた、それを読む学生のことを考えていなかったのがあの本の欠点だね。
-『伊藤和夫の英語学習法』

自分は受験の時はこの本は読みませんでしたが、読んだとしても理解できず挫折したでしょう。
ある意味、この参考書を理解できるならこの参考書は読む必要などない感じです。

出て来る用語も難しい。

『副詞的目的格』 、『H+A』など。

『副詞的目的格』とは要するに、『見た目は名詞だが、副詞の働きをしている語』のことです。

Stars were diamond bright, and there was no dew.
星はダイアモンドのように輝き、露はおりていなかった。
-『英文解釈教室』

Stars were bright.
星は輝いていた。

の bright は形容詞。

では、星が”どのように輝いていたか”を表すのに、“ダイアモンドのように”と言いたいとき、bright の前に diamond をつけます。

Stars were diamond bright.

diamond は名詞です。
ですが、bright という形容詞を修飾しているので、働きからいえば副詞。

こういう副詞の働きをしている名詞を、細江逸記著『英文法汎論』では『副詞相当語句』と呼んでいます。
あるいは『名詞の副詞用法』ともいいます。
これが一番わかりやすいかも。

自分がミステリーの原書から拾った例文。

”You are a day late, detective”.

【訳】「一日遅かったですよ、刑事さん」
M.Connelly 「The Black Echo」

a day は見た目は「一日」という名詞ですが、You are late に「どれだけ遅かったか」を表すのに a day という名詞が付いています。

”We’re a month behind right now.”

【訳】「もう一ヶ月は仕事が遅れているんだぜ」
Jhon Grisham 「The Firm」

a month も名詞だが、behind (遅れて) という副詞を修飾しています。
副詞を修飾するのは定義上、副詞なので a month も副詞ということになります。

Darkness was an hour and a half away.

【訳】日暮れまであと一時間半だった。
Jhon Grisham 「The Firm」

Leeds was seventy-five inches tall, according to the coroner’s report.

【訳】リーズは検死官の報告によると、身長75インチだった。
-T.Harris 「Red Dragon」

『定義上副詞・副詞を修飾』などというと余計にわからなくなるので、こういう表現に慣れることが大切だと思います。

というか、誰でも意識しないで理解していることなのですが。
『名詞の副詞用法』などと言われると逆に意識し過ぎてしまうかもしれません。
中学で習う I am twelve years old. の twelve years も『名詞の副詞用法』ですから。

小宇宙、小宇宙。小宇宙?

入不二基義という元は駿台予備校の講師で今は山口大学の先生をしている方が、”『英文解釈教室』というミクロコスモス”というエッセイ?を書きました。

確かに『英文解釈教室』はミクロコスモス(小宇宙)な感じがします。
何かがミクロコスモスです。
なんとなく。どこかが。
どこかはわかりませんが。

初版は1977年。もう30年も前です。
改訂版とはいえ、それが今でも出版されているのですからスゴイ。

受験に役立つ、役立たない、実用英語には向かない、などの問題はともかく、ひとつの作品としての面白さは確かにあります。
最近、風呂に入りながらこの本を読んでいますが、チョッピリだけ、宇宙を感じています。

なんとなく。

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