bug tap wire ミステリーの英単語

日本語で「盗聴(する)」を他の言い方では何と言うのでしょうか?
盗み聞きする、聞き耳を立てる、か。

でも「盗聴する」とは違う。
盗聴は”機械を使って盗み聞きすること”だから。

そうすると日本には「盗聴(する)」ことを表す言葉は一つしかありませんが、英語ではいくつかあります。

bug, tap, wire の三語がよく出てきて、それぞれ名詞・動詞の両方で使われます。

★洋書ミステリー出る英単語

bug,tap,wire

【動詞・名詞】
1.盗聴器。
2.盗聴器をしかける,盗聴する。

bug は「小さな盗聴器」、
tap は「電話への盗聴器」、
wire は「人の洋服や部屋にしのばせる盗聴器」、

と、ある程度の使い分けがあるようです。

まずは、tap と wire が使われている引用文。

”Someone has tapped our phones and wired our house?”
“And maybe our cars.”

【訳】
「誰かが電話と家に盗聴器を仕掛けたって言うの?」
「たぶん君と僕の車にもね」
-○△□

次は bug,tap,wire の三つが使われている引用文。

”Your house and car are bugged. Your phones are tapped. Your desk and office are wired.”

【訳】
「君の家や車には盗聴器がしかけられている。電話にもだ。君のデスクにも、事務所にも、だ」
-○△□

やはり tap は電話、wire は部屋との相性がよいようです。

英単語 bug の語源。

bug はもともと「お化け」や「かかし」という意味だったそうです。
「驚かすもの」という感じか。
それが「小さな虫」という意味に変化し、そこから「(虫みたいな)小さな盗聴器」という意味が生まれたのでしょう。
なぜ「驚かすもの」が「小さな虫」に意味が変化したのかはOED(Oxford English Dictionary オックスフォード英語辞典)でも不明としています。

bug には動詞で「困らせる,悩ます(=annoy)」という意味もあります。

"C'mon, Frankie, let's go get a cup. You can tell me what's bugging you."

【訳】
「どうしたんだい、フランキー。コーヒーでも飲もうぜ。悩み事をきいてやろうじゃなか」
M.Connelly 「The Black Ice」

ちなみにプログラムのバグもこの bug です。

英単語 tap の語源と、蛇口と「インチキ」。

tap は「(樽の)栓」が原義です。
そこから「樽の栓を抜く、樽の栓をあけて液体を出す」→比ゆ的に「何かを引き出す」→「情報を引き出す」→「盗聴する」となったようです。

ちなみに、(水道の)蛇口はイギリスでは主に tap 、アメリカでは主に faucetフォーセト,ファーセト/です。

ついでにfaucet の語源を調べたところ、false 「間違った,偽の」と関係があるのを知ってビックリ。

英語 faucet 「蛇口」は、直接にはフランス語の fausser (フォセ)(動詞)ねじ曲げる,(事実・判断を)ゆがめる、から来ています。

確かに蛇口は の形に「ねじ曲げられて」います。

フランス語 fausser 「ねじ曲げる」はラテン語の falsus (ファルスス)「偽の,ゆがめられた」にたどり着き、さらにラテン語の fallere (ファッレレ)「だます,ゆがめる」に行き着きます。

つまり、

ラテン語 fallere だます,ゆがめる。
→ falsus ゆがめられた,偽の。
→ フランス語 fausser ねじ曲げる。
→ 英語 fauset (¬ の形にねじ曲げられた)蛇口。

という変化です。

英語 false 「偽の」がラテン語 falsus 「偽の」から来ているのは一目瞭然でしょう。

「蛇口」と「偽の」が同じ祖先を持つとは驚きです。

wire「針金」から「盗聴する」へ。

wire 「針金,電線」から「盗聴する」という意味生まれたのは簡単に想像がつきます。
「盗聴するため電線をとりつける」からでしょう。

The BMW was indeed wired.

【訳】
BMWには本当に盗聴器が仕掛けられていた。
Jhon.Grisham 「The Firm」

虫についての余談。

「虫」というと bug の他に insectworm があります。
worm は ミミズ や うじ虫系の虫。

では insect と bug の違いは何でしょうか。
insect を LDOCE(Longman Dictionary of Contemporary English ロングマン現代英英辞典)で調べると、

a small creature such as a fly or ant, that has six legs, and sometimes wings

ハエやアリのような小さな生物で、六本の足を持ち、羽があるものもある

と書いてあります。
いわゆる昆虫です。

昆虫を国語辞典で調べると「頭・胸・腹の三つがあり、六本の足を持ち、多くは二対の羽がある虫。六脚虫」とあり、同じ定義です。

そういえば子供の頃、「クモは昆虫」ではないと聞いて大人の世界の複雑さを感じた記憶があります。
クモは頭と腹の二つから成り、足が八本だから昆虫よりもサソリなどに近いようです。
ですが生物学上はともかく、一般的には「昆虫」と「虫」は同じ意味で使われていると思います。

bug を LDOCE で調べると(= a small insect)とあります。

日本語と同じく英語でも一般的には bug と insect の違いはあまりないようです。

以下、カメムシの話・・・

COD(Concise Oxford English Dictionary コンサイスオックスフォード英語辞典)を見ると、

bug ■n.2 Entomology an insect of a large order having piercing and sucking mouthparts, including aphids, leafhoppers, cicadas, and many other insects. [Order Hemiptera.] ※chiefly N. Amer. any small insect.

bug ■名詞.2 【昆虫学】 突き刺して液体を吸う口器を持つ昆虫、アブラムシ、ヨコバイ、セミやその他多くの昆虫。[生物学上の目(もく)は、半翅目(はんしもく)] ※主に北アメリカでは、小さな昆虫一般。

半翅目とは何でしょうか。

半翅目の を国語辞典で調べると、羽のことだそうです。

hemipteran 「半翅目の昆虫」をCODで調べると、語源のところは、

-ORIGIN C19:from mod. L. Hemiptera, from Gk hemi- ‘half’ + pteron ‘wing’ (because of the forewing structure, partly hardened at the base and partly membranous).

-語源 19世紀に登場した言葉で、近代ラテン語の hemipteraから来ており、ギリシャ語の hemi- 「半…」と petron 「羽,翼」からなる。(理由は、前翅の構造が付け根の部分は硬くなっており、残りの部分は膜質(透けるように薄い形質)であるから)。

前の羽の半分が硬く、あとは膜質だと言われてもピンときません。
半翅目の代表はカメムシだそうです。

だそうなので、カメムシの画像をインターネットで調べてみました。
が、画像を見てもなんとなくしか分からず、カメムシの映像は凝視するには耐え難いものがあるので調べるのは中断。

ちなみに半翅(羽の半分が硬く、残りは薄い)なのは実際はカメムシ類だけで、カメムシ類は今では異翅類とも呼ばれ、セミなどの残りの半翅目の昆虫は全部の羽は膜質で、同翅類とも呼ばれるそうです。

そんなの知ったって、何の得にもなりませんが・・・

英語のダジャレは手に負えません。

話を英語に戻して、最後に調べたばかりの insect と bug の「虫」という意味と「盗聴器」という意味をかけた引用文。

“What happened to the little black lawyer’s car?”
“It had an insect problem. Full of bugs. I parked it at a mall Saturday night in Nashville and left the keys in it. Someone borrowed it. I love to sing, but I have a terrible voice. Ever since I could drive I’ve done my singing in the car, alone. But with the bugs and all, I was too embarrassed to sing. I just got tired of it.”

【訳】
「あのいかにも弁護士っていうイカシタ黒い車はどうしたんだい?」
「虫がわいちゃってね。bug だらけだよ。土曜の夜、ナッシュヴィルのショッピングモールに駐車したんだけどスペアキーまで車に置きっぱなしにしちゃってね。誰かさんが車を拝借したようだ。僕は歌うのが好きでね、でも聞いちゃいられない声なんだ。だから免許を取って以来、歌うのは車の中だけって決めてたんだ、他に誰も乗ってない時に。でも bug やら何やら、ばつが悪くて歌えなかったよ。もう飽き飽きだ」
Jhon.Grisham 「The Firm」

こういうダジャレのような言葉は訳すのが難しい。虫みたいな盗聴器、盗聴器という虫、ルビを使って処理、などの方法があると思いますが、いい訳が浮かびませんでした。それに翻訳ではないので bug は bug のまま訳しました。

一行目から見てみると、

“What happened to the little black lawyer’s car?”

little が少し、クセモノ。
そのまんま「小さい」という意味だけではないでしょう。

研究社の英和大辞典を見ると、

little は small と異なりしばしば「愛情」「同情」または「非難」「軽蔑」などの感情的含みを込めて用いられる。
ー研究社「新英和大辞典」

ジーニアス英和大辞典を見ると、

small が客観的に小さいことをいうのに対し、しばしば小さくてかわいいという愛情・同情・時に軽蔑(ベツ)の気持を含む
-「ジーニアス英和大辞典」

と、あります。
the little black lawyer’s car の little にはどんな意味が込められているのでしょうか?

the は「君がいつも乗っている例の」ぐらいの定冠詞。
black はそのまま「黒い」でいいでしょう。

little は「愛情」の意味だとすれば「カッコイイ,イカシタ」、「軽蔑」の意味だとすれば「(金持ち)弁護士だから乗れる」という皮肉が込められているのだと思います。
が、どっちだかよくわからず。
一応、「イカシタ」としておきました。

“It had an insect problem. Full of bugs.

上で追求?した bug と insect の違いで、

日本語と同じく英語でも一般的には bug と insect の違いはあまりないようです。

と、書きました。

普通はそうでしょうが、この引用文では、虫(insect,bug)と、bug(虫,盗聴器)の違いが効いています。
ずるく訳すとすれば、

虫がわいちゃってね。bugだらけだよ。
※訳者注 bug には「虫」という意味と「盗聴器」という意味がある。

こういうのは難しいです。

難しいので次の文。

I parked it at a mall Saturday night in Nashville and left the keys in it.

parked it の it は当然、the car(=the little black lawyer’s car)。
the keys は定冠詞+複数形。

冠詞と数による、車の中に置きっぱなしにしたスペアキー数。

a keyいくつかあるキーの中の、一つのキー
keysいくつかあるキーの中の、
(全部ではないが)何個かのキー
the key持ってるたった一つのキー
the keysいくつかあるキー全部

left the keys in it は、スペアキーまで全部置きっぱなしにしてしまった、ということ。

Someone borrowed it.

Someone has stolen it.「誰かが盗んだ」などと言わず、borrowed となっています。
borrowed を使うことにより、「車が盗まれたって騒ぐことじゃないさ。もっと大変なことがいっぱいあるのだから」というナゲヤリな感じがします。
かな?

次の文。

I love to sing, but I have a terrible voice.

【訳】
僕は歌うのが好きでね、でも聞いちゃいられない声なんだ。

これだけでは、普通に「歌が下手なんだ」ということです。
しかし、これは以下の文へのつなぎ。

Ever since I could drive I’ve done my singing in the car, alone. But with the bugs and all, I was too embarrassed to sing. I just got tired of it.”

【訳】
だから免許を取って以来、歌うのは車の中だけって決めてたんだ、他に誰も乗ってない時に。でも bug やら何やら、ばつが悪くて歌えなかったよ。もう飽き飽きだ」

Ever since I could drive で、運転免許を取得して以来。
こういう表現はなかなか思い浮かびません。
なるほど、簡単でうまい表現だなと思いました。

I’ve done my singing in the car, alone.

when I'm alone ではなく、ただ、alone を付け足したことにより、「当然、一人のときだけ」という感じがします。

最後の文、I just got tired of it. の just は「まったく…だ」。

(参考)
I am just starving.
本当に腹が減って死にそうだ.
「カレッジクラウン英和辞典」

I just got tired of it.

just があることによって、心底イヤになっている気持ちが伝わります。

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