英語構文 There is 名詞 ~ing、その1

最近とても面白い本を読み返しています。
塚本哲也著 「エリザベート ハプスブルク家最後の皇女」
英語には直接関係ある本ではありませんが、欧米の外国語を学ぶには欧米の歴史を知ることも重要だ、ってことで。

ハプスブルク王朝(帝国)は第一次世界大戦後に崩壊してしまいましたが、なんといっても(フランスのブルボン王朝と並び)”血統”の良さではナンバーワンです。イギリス王朝の比ではありません。

この本は、ハプスブルク最後の皇帝、フランツ・ヨーゼフ帝の孫、皇女エリザベートの人生を中心に、19世紀から第二次大戦までの激動のヨーロッパを描いています。読みやすく、ヨーロッパの大乱で翻弄される小国の苦悩がヒシヒシと伝わってきます。
とても良い本です。

それはさておき、今日洋書を読んで気になった英語のこと。
構文的に書けば、There is 名詞 ~ing

There were a million lights glinting in the crisp, cool air.

【語句】
¶glint/グリント(動詞)きらめく。
¶crisp/クリスプ(形容詞)(空気が)冷たく、乾いた。

【訳】
空気は身がひきしまるように冷たく、眼下には無数の明かりがきらめいていた。
Michael.Connelly 「The Black Ice」

まずは引用文に出て来る単語から。
million は文字通りには 100万ですが、比ゆ的に「無数の」という意味でしょう。

〔a ~〕 無数の,多数の(cf. thousand).
「ジーニアス英和辞典」

an extremely large number of people or things
ー「ロングマン現代英英辞典」

引用したこの洋書「The Black Ice」は翻訳も持っているので見てみたところ、次のように訳していました。

乾燥した、涼しい空気のなかに百万の明かりがきらめいている。

日本語でも”百万の明かり”といえば”数えられないくらい無数の”という意味なのは容易にわかるので”百万”とそのまま訳した方がよいのかな、とも思いました。
どうでしょう?

a million lights は lights と複数形になっています。
”光” や ”日光” といった物質?の意味では不可算名詞。
”明かりをつける” の明かりや、”ひとすじの光” などの場合には可算名詞になるようです。
ただし、”光” でも、どんな光か、という形容詞がつくと可算名詞のようです。
辞書からいくつか例文を拾ってみると、

The sun gives us light and heat.
太陽は我々に光と熱を与えてくれる。
「カレッジクラウン英和辞典」

We saw the lights of the city.
私たちには町の明かりが見えた。
-カレッジライトハウス英和辞典

a brilliant light
さん然とした光
「カレッジクラウン英和辞典」

可算・不可算、冠詞は難しいです。
ちなみに、

a million lights

と、複数なのに冠詞が a なのは a が one の代理だからでしょうか?
それとも a million of … の of が抜け落ちたからでしょうか?
ん・・・
まぁ、慣用だ、てことで。

英語を読んでるとき、なるべく可算・不可算・冠詞に気をつけて読んでいますが、悩むこと多し。

"冷たすぎる" のか、"心地よい" のか。

無数の明かりがきらめいているのは、in the crisp, cool air
crisp をジーニアス英和辞典で調べたところ、ピッタリの例文がありました。

cool and crisp ひんやりとすがすがしい

crisp は、空気が乾燥していて、(悪い意味で)身がひきしまるように冷たい、(よい意味で)ひんやりとしていて心地よい。

空気がジメッとしていないから、場合によっては ”ひんやりと心地よい” の意味にもなるようです。
引用文ではどちらなのでしょうか?

この場面は年が明けたばかりの真冬の話。
冬は空気が乾燥しています。だから冬は火の用心、などとよく言われます。

冬の寒さは、”肌にピリッとくる”寒さです。
やはりこの引用文の crisp は ”身がひきしまるような寒さ” のようです。

さらなる確かめ。

There were a million lights glinting in the crisp, cool air.

のすぐ後に続く文は、

She was wearing his jacket over her shoulders.

【訳】彼女は彼のジャケットを肩に羽織っていた。

とあるから、引用文の crisp は ”肌にピリッとくる寒さ” のようです。
やはりすべては文脈です。

もういちど翻訳者の訳を見ると、

乾燥した、涼しい空気のなかに百万の明かりがきらめいている。

”涼しい” というと、多少、プラスの意味に感じます。
まぁ、「ちょっと涼しいからジャケットでも羽織るか」という会話もありますからなんともいえませんが、どうでしょう?

空気の中にきらめく、とは?

それからもうひとつ、翻訳者の”空気の中に(明かりが)きらめいている”という表現がちょっと気になりました。

とはいえ誤訳、不十分訳というのではなく、それには理由があります。
前提としてまず、この家はかなり高い丘に建っている、ということ。

それをふまえてこの引用文の前の文は、

She was at the railing, staring out over the Valley.

【語句】
¶railing/レイリング(名詞)手すり,(ベランダなどの)さく。
¶stare/ステア(動詞)じっと見つめる。

【訳】
彼女は手すりに寄りかかり、眼下に広がる景色を見渡していた。

訳はかなり意訳しました。
ちなみに翻訳者の訳を見ると、

彼女は手すりのそばにいて、ヴァレーを見渡していた。

She was at the railing は文字通りには翻訳者の言う通り、「手すりのそばにいて」ですが、手すりのそばにいるとは暗に「寄りかかる」ということを意味しているのかな、と思ったので「手すりによりかかり」と訳しました。
やりすぎでしょうか?

Valley はちょっと難。

valley は「低地・くぼ地・谷」という意味ですが、引用文では Valley と大文字になっています。
盆地のような地形の、とある地域の固有名詞なのでしょうか?
翻訳を見ると「ヴァレーを見渡していた」と反則気味のカタカナ処理。

それはともかく、staring out over (見渡している)のは眼下にあるところなのは確かです。
over でもそれがわかります。out は視線が「伸びる」感じ。
staring out over … という表現で眼下に広がる景色をじっくりと見渡す様子が目に浮かびます。

それをふまえて最初の引用文を見てみると、

There were a million lights glinting in the crisp, cool air.

【訳】空気は身がひきしまるように冷たく、眼下には無数の明かりがきらめいていた。

高い場所から下を眺めているので sky ではなく、 in the crisp, cool air となっているのでしょうか。
air を使うことによって きらめく明かりが空気の一部になっているような感じがします。
かな?

やっと本題。

さて、引用文の単語の話で長くなってしまいました
やっと There is 名詞 ~ing の話。

『表現のための実践ロイヤル英文法』という本にこの構文の解説があります。

There were some Haitians working in the building at the time of the crash.
(衝突当時,ビル内には数人のハイチ人が働いていた)

●この文では、文頭の there には特に意味がないから、これを取った Some Haitians were working in the ... としても、文は成り立つ。
-「表現のための実践ロイヤル英文法」

there がなくても文が成り立つのはわかりましたが、それでは there があるのとないのではどう違いがあるのでしょうか?

『英文法詳解』にその違いが載っています。

(参考) There is ~ -ing は、ふつうの進行形に比べて、もっと冷静な第三者的な立場から進行または反復中の動作をながめ陳述している感じの言い方である。そして there is という導入があるため、いきなり「主語+進行形」でいう唐突さが避けられる。
-「英文法詳解」

なるほど。唐突さを避けるため、のようです。

A million lights were glinting in the crisp, cool air.

より、

There were a million lights glinting in the crisp, cool air.

の方が唐突さが少ない感じがします。
かな?

There is 名詞 ~ing の形は洋書を読んでいるとよく出てくるので調べてみました。

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