研究社「英語語源辞典」

研究社 寺澤芳雄(編集主幹)

研究社の『英語語源辞典』は日本で唯一の(ちゃんとした)語源辞典です。
ただし、値段も高い(7,700円)ですし、興味本位で買っても本棚でホコリまみれになってしまうかもしれません。

でもこの辞書は使ってみると面白いこといっぱいです。
そこで、今回は語源辞典とはどんな辞書なのか書いてみたいと思います。

mystery の語源を調べてみる。

このブログは "ミステリーの洋書を楽しむ(のが目標)" ですので、mystery という語を引いてみます。

mystery1 n. 《a1333》 秘儀.《 ? a1425》 宗教儀式.†《1529 T.More》-《1617》 一身上の秘密.cf. Shak. Ham 3.2.366. 《1602-03 Shak. AWW 5. 3. 103》 神秘;秘密.《1744》 聖史劇.《1973》 ミステリー小説.

慣れないと何が書いてあるのか分りづらいと思います。

一行目から説明すると、

《a1333》 秘儀.

とは、「秘儀」という意味が英語の文献に最初に現れたのが 1333年以前であるということです。
それが順に続きます。

《 ? a1425》 宗教儀式.

1425年以前?に書かれた文献に「宗教儀式」という意味が初めて出た、ということです。

《1529 T.More》-《1617》 一身上の秘密.cf. Shak. Ham 3.2.366.

†マークは廃語になった、という意味です。1529年にT.More が書いた文献に「一身上の秘密」という意味が初めて現れ、その意味で使われた最後の文献は 1617年である、ということです。

しかし、本物の辞書ではここの † が抜けています。
この辞書の元になったOED(オックスフォード英語辞典)には † マークが入っているので、誤植というか抜け落ちたのでしょう。
所有してるのは初版ではないのになぜ直っていないのか。
小さなことですが、辞書としてはいただけません。

cf. Shak. Ham 3.2.366.

というのは、シェークスピアの「ハムレット」の第三幕第二場を参考に、ということですが、不親切にも原文は載っていません。しょうがないからOEDを見ると、

You would pluck out the heart of my Mysterie(=Mystery).
「お前は俺の心の秘密を引き出せるとでも言うのか」

とあります。
が、いまいち語源辞典のイイタイコトがわかりませんでした・・・

《1602-03 Shak. AWW 5. 3. 103》 神秘;秘密.

「神秘;秘密」という意味は 1692年か3年に書かれたシェークスピアのAWW(=All's Well That Ends Well)「終わりよければ全てよし」に初出だということです。

《1744》 聖史劇.《1973》 ミステリー小説.

mystery の一語でミステリー小説という意味を表すようになった初出年代は1973年ということです。

本当か? 新しすぎないか?

ただし、注意書きとして下の方に、

mystery story 「推理小説」は Chesterton (1908)に初出.

とはありますが。
ん・・・
1960年刊の研究社新英和大辞典(第四版)の mystery の項に、

mystery
・・・
=mystery story

とあるが・・・

どうせなら、もっとわかりやすい語源を。

その後、語源が書かれています。

◆ME misteri(e), mysterye - AF *misterie=OF mistere (F mystere) // L mysterium - Gk musterion secret rite ← mustes initiated one ← muein to close the eyes ← IE *mu-(擬音語).

たどると古代ギリシャ語の muein (= to close the eyes)「目を閉じる」に行き着き、さらに IE = 印欧祖語(インド・ヨーロッパ語の大元)にたどり着く、ということです。

mystery の先祖がわかりました。

しかし、「目を閉じる」からなぜ「秘儀,神秘」などの意味が生まれたのか書いてありません。

COD(Concise Oxford English Dictionary コンサイスオックスフォード英語辞典・第11版・2004年)には書いてあります。

The word mystery entered Middle English via Old French mistere or Latin mysterium. As with the associated word mystic, it ultimately derives from the Greek word musterion, which has its root in muein ' close the eyes or lip ' , also ' initiate ' . The connection between these two meanings probably arose from secret religious ceremonies in ancient Greece, which were witnessed only by the initiated, who swore never to disclose what they had see.

mystery という言葉は古フランス語 mistere もしくはラテン語 mysterium から中英語時代に英語に取り入れられた。mystic 「神秘的な」に関係ある言葉と同じように、mystery は最終的にはギリシャ語の musterion にたどり着き、さらに「両目や口を閉じる;入信させる(奥義を授ける)」という意味の muein に起源をたどることができる。その二つの意味のつながりは、おそらく古代ギリシャの秘密の宗教儀式から生まれたのであろう。そういった儀式は、入信した者のみ参加することが許され、入門者は「見たことは絶対に多言しない」と誓わなければならなかった。

こういうことが語源辞典にも書いてあってほしいです。もちろん、書いてある場合もありますが、全部ではありません(それは無理か?)。

語源を知る、こと。

最後に日本に関係する語を見てみると、英語の文献に初めて現れた年代は、Japan(1577年)。samurai「侍」(1727年)。hara-kiri「ハラキリ,切腹」(1840年)。geisha「芸者」(1887年)。

など。

語源を知れば、その言葉を深く知ることができるし、頭に入りやすくなります。

ただし、何度も言うようですが、値段が高いし、よほど語源に興味がなければ「開かずの書」になること必至です。
紹介しておいてなんですが・・・

細かいことが気になる自分には必須とまではいきませんが、たまに調べるといろんな発見があります。
まさに英単語のウンチクの辞典です。

コメント

from 成田

お教えください。
1.ラテン語の mysterium
2.ギリシャ語の musterion
3.起源の muein
これらは日本語で何と発音すればよいですか?
また、
合理・合理的(rational)の語源と発音をご教示頂きたいのです。
どうかお願い申し上げます。

from まさんた → お答えページ

コメントありがとうございます。
今日の記事でお答えします(できるだけ)。
あと、お名前がご本名のようなので、下のお名前を除いて公開しました。

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