2006年9月28日 Posted by まさんた
gag ミステリーの英単語
人質にされた哀れな格好、手足は縛られ、口には粘着テープ。
テレビ・映画でおなじみです。
あの、口に貼るテープが gag。
★洋書のミステリーに出る英単語
gag [ ギャグ ]
【動詞・名詞】
1.(口をふさぐ)粘着テープ,猿ぐつわ;テープで口をふさぐ。
2.(吐き気を催し)ゲーゲーいう。
3.口止め(する),言論抑圧(する)。
4.ギャグ,ジョーク(=joke)。
たくさん意味がありますが、『カレッジクラウン英和辞典』の語源欄をみると、
たぶんむせび声をまねた擬音語
とあります。
日本語の「ゲーゲー」に近いかもしれません。
のどが詰まりそうなうめき声は万国共通で濁音なのでしょう。
まずは、(口をふさぐ)粘着テープの意味の引用文。
She tried to scream but the sound was swallowed by the gag.
【語句】
¶scream/スクリーム(動詞)叫び声をあげる。
¶swallow/スワロウ(動詞)飲み込む。【訳】
彼女は叫ぼうとしたが、口に貼られた粘着テープのせいで声がかき消された。
-○△□
次は「粘着テープ」と「ゲーゲーいう」の二つの意味が使われている引用文。
Susan pulled the gag off her mouth and the woman spit black mucus. She gagged for a moment, a deep, dying sound.
【語句】
¶spit/スピト(動詞)(唾などを)吐く。
¶mucus/ミューカス(名詞)粘液。【訳】
スーザンが女の口に貼られた粘着テープをはがすと、女は黒い粘液を吐き出した。女はしばらくゲーゲーもがいた。腹の奥底から響く女のうめき声がだんだんと静かになっていく。
-○△□
a deep, dying sound 「深く、消えゆく音」は女のゲーゲーいう(gag)を説明した語句です。
dying は普通に「死にそうな」とも考えられますが、「消えゆく」と取りました。
この文のあと、この女の人は階段を一段飛びで駆け上がったので。
dying が使われた例をみると、
a dying fire
【訳】消えかけている火
-「カレッジクラウン英和辞典」の用例The fireplace had the glowing remnants of a dying fire.
¶remnant/レムナント(名詞)残り,残骸。
【訳】暖炉には消えかかった炎の燠き火が赤く光っていた。
-Michael.Connelly 「The Black Ice」
a deep, dying sound とは、女のゲーゲーという野太い声が徐々に、
ゲー・・・ゲー・・・ゲー・・・
となっていくことでしょう。
「猿ぐつわ」というと・・・
ちなみに、gag の訳はどの辞書でも「猿ぐつわ」となっています。
猿ぐつわは今ではイロイロな使われ方をするようですが、中立的な意味は、「(黙らせるために)口に噛ませて首の後ろで縛る布」。
が、人質に声を出させないようにするとき、現代の誘拐犯はパイプ工事などで使う粘着テープ(duct tape)を使用するのが王道?ではないでしょうか。
だから「粘着テープ」と訳しました。
もちろん、めったに見ませんが「(黙らせるために)口に噛ませて首の後ろで縛る布」という意味で使われることもあります。
下の引用文はその意味。
He bound her feet and hands with panty hose, then ripped the bedsheets into long strips. The woman did not move. When he finished the binding and gagging, she resembled a mummy. He slid her under the bed.
【語句】
¶bind/バインド[過去,過去分詞・bound/バウンド](動詞)しばる。
¶panty hose (名詞)パンティーストッキング。
¶rip/リプ(動詞)引き裂く。
¶strip/ストゥリプ(名詞)(布の)細長い切れ。
¶resemble/リゼムブル(動詞)...に似る。
¶mummy/マミ(名詞)ミイラ。
¶slide/スライド[過去,過去分詞・slid/スリド](動詞)すべり込ませる。【訳】
男は女の両手両足をパンティーストッキングでしばり、ベッドのシーツを切り裂き、何本かの長い紐(ひも)をつくった。女は身動きもしない。女の手足を縛り上げ、(ベッドの切れ端で作った)猿ぐつわをかませ終えると、女はミイラそっくりになった。男は女をベッドの下にすべり込ませた。
-Jhon.Grisham 「The Firm」
一行目からみてみると、
He bound her feet and hands
【訳】男は女の両手両足を縛った。with panty hose,
【訳】パンティーストッキングで。
「手足」が feet and hands と日本語と逆になっています。
英語の慣用的言い方だと feet and hands なのかな?と思い和英辞典で調べてみました。
てあし[手足] arms and legs ; hands and feet
-ジーニアス和英辞典
日本語と同じ順の hands and feet でもいいようです。
then
【訳】そして、ripped the bedsheets
【訳】ベッドシーツを切り裂きinto long strips.
【訳】幾つかの長い紐にした。
into long strips の into は「結果・変化」の意味。
divide the cake into three pieces
ケーキを3つに分ける。
-「ジーニアス英和辞典」
で、次の文。
The woman did not move.
【訳】女は動かなかった。When he finished the binding and gagging,
【訳】男が縛り上げ、猿ぐつわを噛ませ終えると、she resembled a mummy.
【訳】女はミイラそっくりになった。
When he finished the binding and gagging の the binding and gagging には定冠詞、the が付いています。
定冠詞が付いている、ということは読み手にもすでに了解済みのこと。
前を見てみると、
He bound her feet and hands with panty hose
【訳】男は女の両足両手をパンティーストッキングで縛った。
とあるので、それをふまえ、 the binding。
the (bindig and ) gagging はどこかと前をみると、
(He) ripped the bedsheets into long strips.
(男は)ベッドシーツを切り裂き、何本かの長い紐をつくった。
はっきりとシーツを切り裂いてつくった紐で猿ぐつわにしたとは書いていませんが、状況証拠からみて猿ぐつわの材料はシーツを切り裂いた紐のようです。
そして、strips と複数なので、紐を何本かつくったのは間違いありません。
そのうちの一本を猿ぐつわにし、残った紐で全身をグルグル巻きにしたので she resembled a mummy. (女はミイラそっくりになった) のでしょう。
少し冠詞にこだわってみました。
この引用文にはその他にも冠詞(不定冠詞・定冠詞・冠詞なし)が使われてます。
| panty hose | 冠詞なし |
| the bedsheets | 定冠詞プラス複数 |
| a mummy | 不定冠詞 |
それぞれ意味があるのですが、くどくなるので省略。
それでは最後の文。
He slid her under the bed.
【訳】男は女をベッドの下にすべり込ませた。
なぜに猿ぐつわ?
ところで日本語の「猿ぐつわ」は、なぜ「猿ぐつわ」なのでしょう。
全部漢字で書けば 猿轡。
轡を漢和辞典で調べると、車と口と糸が合わさった字で、車を引く馬の口につける糸(=ひも)、つまり「(馬につける)たづな」の意味だとわかります。
確かに猿ぐつわをされている姿は「たづな」をつけられている姿っぽいです。
轡は納得。
それじゃあ、猿ぐつわの猿はなぜ猿なのでしょう。
「猿」を国語辞典で調べるとモンキーの意味以外に、「戸締りのために雨戸の桟(さん)に取りつける道具」とあります。
木片を差し込んで戸を開かなくする、今でいう「鍵」みたいな物でしょう。
「猿」になぜそのような意味があるのかは日本語の語源辞典を調べてない(持っていない)のでわかりません。
よって以下は推測ですが、古語の「さす(鎖す・閉す)」から来ているのは間違いないでしょう。
古典を読んでいると 「戸さして(戸を閉めて)」 という言葉をよく見かけます。
「戸を閉める,鍵をかける」という意味の「さす」です。
「さす(鎖す・閉す)」がどんな経緯で名詞の「さる」になったのかは不明ですが、「猿」という漢字はおそらく当て字。
「猿=鎖・閉」 と、わかれば、猿ぐつわの「猿」も、縛る、閉じ込める感じがします。
一応、猿ぐつわの謎は解けました。
お笑いの「ギャグ」は「猿ぐつわ」から来た?
英語の gag に戻ります。
三番目の意味、「口止め(する),言論統制(する)」は、「猿ぐつわ」という意味からすぐです。
口にチャック、という感じでしょう。
問題は四番目の意味、日本語でいう「(お笑いの)ギャグ」です。
元々は演劇用語で、「俳優がアドリブ的に言う機知に富んだ滑稽な文句;台本にある面白い話、冗談」という意味で、それが普通に「冗談(= joke)」となったようです。
ただし、「冗談」という意味で gag を使うことは少ないように思います。
それではなぜ「猿ぐつわ」の gag に「冗談」という意味が生まれたのか。
どうやら謎のようです。
というより、そもそも「猿ぐつわ」の gag とは語源が違うようです。
COD(Concise Oxford English Dictionary コンサイスオックスフォード英語辞典 2004)では「猿ぐつわ」の意の gag と「ギャグ,冗談」の意味の gag は別の見出しにし、はっきりと語源不詳と書いてあります。
gag2 ■n. a joke or funny story, especially one forming part of a comedian's act. ■v. tell jokes.
-ORIGIN C19 (orig. theatrical sl.):of unknown origin.
OED (Oxford English Dictionary オックスフォード英語辞典)には採炭(coal mining)に関する用語から来たのではないかとあります。
長くなるので書きませんが、はっきりしないのは確かなようです。
当然、テープも口に貼れます。
最後に、gag と同じ意味のテープ(tape/テイプ)を使った例文を。
She sucked mildewy air through her nose - her mouth was still taped shut.
【語句】
¶suck/サク(動詞)吸う。
¶mildewy/ミルデューイ(形)白カビの。【訳】
女は鼻からカビ臭い空気を吸い込んだ。口はまだテープでしっかりとふさがれていた。
-Jeffery Deaver 「The Bone Collector」


コメント
from 匿名さん
( … ) ですw
※教育上、あまりアレなコメントなので、サクッと省略。
ご了承のほどを。by 管理人 まさんた
2007年12月30日 00:08